菜の花のお話

□─知らなかった事実─
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久しぶりに会ったあなたは、あの時と全然変わっていなかった。
綺麗な長い髪も、華奢な体も、流れるような声も全部、変わっていなかった。
ただ一つ、あなたはあの時よりも辛そうな、苦しそうな顔をしていた。
やっぱりみんなといる時は笑っていたけれど、私には無理に笑っているようにしか見えなかった。
私はあなたに声をかけたかった。たくさん、たくさん話したかった。
あなたに貰った透明なガラスパズルも完成して、見せようと思って持ってきていたのに、結局渡すことはできませんでした。
家へ帰って出来上がったパズルを見るたび、切なそうな顔をしたあなたが浮かびます。
私は一年前、あなたに救われた。ズタボロの心を癒してくれたのも、立ち止まる私に手を差し伸べてくれたのも、どうしようもなくて、本当に生きてるのが辛くて、何もかも諦めようとしていた私に光を与えてくれたのも、あなたでしたね。
だけど、その時の私は何にも知らなかった。あなたにも心の奥に秘めた闇があることを…。
だってあなたはいつも笑っていたから。毎日を楽しそうに生きていたから。
今さら心配になってメールを送って見たりもしたけれど、一度も返信が返ってくることはありませんでした。

私はあなたに貰った透明なガラスパズルも、ねこの絵柄のハンカチも、一緒に撮った写真も全部大切な思い出だけど、きっとあなたにとってはすぐに忘れてしまうような、思い出だったのかと今でも不安に思います。

あなたは私に苦しいことは何も言わなかった。
辛くてしんどくてクラスに行きたくないと言えば、無理に行かなくてもいいんだと、そばにいてくれましたね。相談するのが苦手で、泣くことのできない私を変えてくれたのもあなたでした。
あなたに出会えて、初めて人を信じてみてもいいのだと思えたんですよ。
それなのに、私はなにもしてあげられなかった…。
あなたが苦しんでいることさえ気づけなかった。
今になって気づいても遅いのかもしれないけれど。






今度は私があなたを助ける番になりたいです。

今からでは、だめですか…?

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