菜の花のお話
□─サクラチル─
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僕はあの瞬間、何を思ったのだろう。
桜が舞い散る中、僕は高校の合格発表に行っていた。
あんまり自身はなかったし、もしかしたらダメかもしれないと、何度も何度も思った。
周りでやったー!と喜ぶ声が聞こえるたび、自分に焦りが出てくる。
そして…。
ついに僕は、自分の番号を見つけることはできなかった。
泣くこともしないまま、僕は家に帰った。どうやって帰ったとか、なにしてたとかは覚えてない。
気づいたら家にいて、ぼーっとしていた。
どうしようと焦る自分の中で、どこか大丈夫だろと安心していた自分もいたのだろう。
友達から送られてくる、「どうだった?」のメールを見るたび、自分が落ちたのだと言う実感が湧いてきて…。
合格発表から四日後、僕は泣いた。
遅すぎる自覚だった。
落ちたことへの悔しさ、自分の情けなさ、安心していた自分に対しての怒り…。
あらかじめ受かっていた、併願の高校の制服を見るたび、どうしようもない後悔に襲われる。
今更後悔しても遅いことは知ってる。
僕は現実を受け止めなくてはいけない。
あの日の自分自身を、僕は忘れない。
そして前を向いて、今を歩いていかなきゃ…。
新しい制服を着て、僕は歩き始めた。