百物語

□第九夜 飴買い幽霊の子守
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飴屋が寺に着く頃には、子守唄は聞こえなくなっていた。

おぎゃあ おぎゃあ

「だが赤子の泣き声が消えない。 まさか‥あの墓の中かァ!?」




飴屋は和尚を呼んできて、墓を掘り返してみた。




するとそこにはあの女の屍が、不思議と全く今までのままで、

おぎゃあ おぎゃあ おぎゃあ おぎゃあ おぎゃあ おぎゃあ おぎゃあ

泣く赤子をしっかりと抱きかかえていた。

「この子の為に、飴を買いに来ていたのか。」


聞けば、身ごもったまま生き倒れていたので、※1六文銭を持たせて弔(とむら)ったのだと言う。

「飴を買おうにも六文銭を使い果たし、腹を空かせた赤子を寝かしつけることが出来無かったのか。」

「さぞ辛かったろう。 コイツは俺が育ててやる…もう大丈夫だ。」


そう言って飴屋が手を差し伸べると、女の手がスッと緩み、赤子は飴屋の腕の中に収まったそうな。

「ふえぇぇん〜〜、うあぁぁぁんン!!」

「おーよしよし、どうしたもんか。 そうだ、あの唄を唄ってやろう。」


ねんねんころりよ おころりよ
坊やはよい子だ ねんねしな――

「キャハハ、キャハハッ!」

「よしよし良い子だ! 一緒に唄おうな。」



第久夜 ゛飴買い幽霊の子守唄″

原作:『名も残らぬ偉大な見人達』



語り手:坂田 銀時


飴屋:土方 十四郎


幽霊:沖田 ミツバ


赤子:坂田 銀時


和尚:沖田 総悟
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