昔ノ話

□゛真の愛を僕に下さい。″ @(過去拍手文小説)
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―本誌でいて、パラレルな世界…。―





――――――――――――1.



〈だいすキナオとうサン、オかあサンへ
ぼくハコノよトイウところニうまレテコレテうれシイデス。
まいにちガしあわセデス。
オとうサンハいつモぼくヲたくさんぶツケド、オかあサンモいつモぼくヲみテ『みにくイ・きもチわるイ・しンデほシイ・ウザい・きえロ』ッテぼくニハわかラナイことばヲいッテたくさんけルケド、ぼくハしあわセデス。
ダッテ、ぼくノオとうサントオかあサンハふたりダケダカラ…。〉






゛真の愛を僕に下さい。″ @





――――――――――――2.



飄々と冷た過ぎる風が四方八方から吹き荒れる。


季節は極寒の一歩手前を行(ゆ)く師走の半ば、十二月の中旬辺りであった。

あといくつか寝るとイブとクリスマス、その次にやってくるのは大晦日と元旦である。

自分は冬は好きではあるがやはり寒い。


寒い。 寒い。
これはそんな寒い、ある2人の出会いから過去・現在、そして未来へと繋がっていく話…。




――――――――――――3.



「あ〜〜〜くそ寒ィ。 何でこんな日に限って巡回してんだ俺はよぉ?!」


そんな情けない愚痴をつらつらと垂れ流す黒い髪に煙草がトレードマークのその男は、武装警察真選組の鬼の副長・゛土方 十四郎″であった。

今はこの寒い中辛くも巡回中らしく先程からぐちぐちと聞こえてくる。

「おいちょっと管理人! いっくらこの小説が『銀魂』のしかもBL系の非公式サイトのものだからってそんな身も蓋も無いこと言うなや!! 前回(刹那物語小説・『゛初対面で顔をつき合わせたはずなのに、「アレ…? なんかオレこいつの事好きじゃね?」ってあるよね?″』より参照。)の時はなんとかフォローしてやったが俺だってキレるかんなそろそろ!!! 鬼の副長なめんなよコラァ!!!」

なんてそんな罵詈雑言で罵りながらも土方は煙草のフィルターをギリリと噛み潰す。

寒さの所為もあってかその端整な顔がひきつりつつも、如何せんその瞳孔の力強さはまだまだ現在のようである。

しばしこちら側(何処だよ)を睨みつけた後、こめかみをひくつかせイラつきながらも煙草の煙りを盛大に吐き出す。

「ったく、本来なら今日は非番だった筈なのに余計な事しやがって山崎とか山崎とか山崎とか!!」

と、再び煮え繰り返る腸(はらわた)をどうにか抑えつけると土方はふと立ち止まった。


『――――――――――アーーン…‥ゥアーーーン!』



何処からか吹き荒れる風に運ばれてくる小さな子供の泣きじゃくる声が聞こえてきた。

途端に土方は先程の怒りも何処へやら、少し冷静さを取り戻しなんとなく耳をすませてみる。

『――――ゥアーーーン…‥ア〜〜〜〜ン!』

そして今度はハッキリと聞こえた。

子供が泣き叫んでいる声が…。

土方はチッと舌打ちし近くに件の子供を探していそうな人物を探してみる。

しかし今土方が居るのは江戸で最も賑やかで華やか、そして下品で愛憎が溢れ情に暖かい場所、゛かぶき町″である。

今はまだ昼過ぎにも関わらず夜のかぶき町特有の華々しさは無いものの、もうすぐクリスマスというだけあって今の時間帯でもまばらに人々が町を闊歩している。

しかし皆子供の泣き声が聞こえていないのか、あるいは気付いているけど他人のフリをするのに精一杯なのか誰も彼も足を止める者はいない。

いやこの場合後者が正解なのだろうと土方は思う。

元々かぶき町は情に熱い町ではあるが逆に冷たい町でもあるのだ。

『他人に優し過ぎる奴は身を滅ぼす。』

ここはそういう場所なのであった。

分かりきっていた事ではあるがやはりキツいなと土方はくわえていた煙草を地面に落とし、己の靴底で火種を消す。

自分が動くのを(人の事言えねぇ)最初渋りはしたがやはりココは一警察の身として行動するべきだろうと思い直し泣き声がする方だと思われる路地裏へと足を運ぶ。


「はっ…。 何だかんだ言い訳してもやっぱ゛幕府の狗″ってか…」

どことなく哀しげそうに一人ごちる土方は溜め息をつき、目標へと足を進める―――。
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