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□こんな気持ちは、雨と共に洗い流して
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本当はわかってた。
あなたが私を見ていないこと。
だから私は気が付かないふりしてた。





「あ、雨…傘持ってきてないや。」





「おッ、何してんだ?」





「トシ…。雨が降ってきたから雨宿り。これから屯所に行こうと思ってたの。」

「なら一緒に行くか?俺、傘持ってるから」




「いーや、一人で行けるから。」

「そうか。」






沈黙が二人を包む。







「トシ、私…」

「ん?」




「やっぱりなんでもない。」



「変な奴」



トシから見たら私は妹みたいにしか思われて無いのかな?

こんなにも私はトシを思っているのに









「私、先に行くね」






冷たい雨が勢い良く私に降りかかる。
切なさに、自分の無力さに涙がでる。
けど涙なんだか、雨なんだかわからない。










「おい」






引き止めないで
私の心を。








「待てよ」







好きになってしまうから。






「こっち向けよ」




向けないよ。
私の心、今歪んでる。







「婚約者と幸せになってね」






トシは一週間後にお偉いさんの娘さんと結婚する。だから諦めなくちゃならない。







「サヨウナラ」





二人の言葉を詰んだのは頻りに降り続ける
雨だった。










こんな気持ちは、雨と共に洗い流して









(本当は伝えたかった、「好き」って言葉)

出来ることならお前に「好きだ」って伝えたかった










■「愛しき君に送る言葉は」様に提出■

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