・Novel

□満員電車的恋愛論(火→←黒)
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既に満員と言える電車に火神は無理やりその大きな体を押し込んだ。
「…相変わらずすげーな、日本のラッシュは」
「そうですね。」
「ああ…って黒子ぉ!?」
驚いて大きな声を出せば周りからジロリと睨まれ、隣の黒子も唇の前に指を立てシーッとする。
その様子に火神はおちょくってんのかっ!っと怒鳴りたくなるのをぐっとこらえた。

「…いつから居たんだよ。」
「火神君が電車に乗り込む前から居ましたよ。」
怒鳴りそうなのを堪えたせいでかなり不機嫌そうな声になった火神に黒子はいつも通り飄々と答えた。
「なら声かけろよな!」
火神がもっともな事を言った瞬間、電車が大きく揺れた。


満員の車内は人々が押し合いへし合い、そして黒子は火神に……ジャストフィットした。


要するに人々の波に押しやられてる内に丁度頭一つ分違う身長差のせいもあって、黒子が火神にすっぽり抱き締められる形になってしまったのだ。 
  
「なっ…オマエどけよ!」
「…僕も離れたいのは山々何ですがこの混雑の中じゃ無理そうです。」
黒子の言うとおり、ぎゅうぎゅうで隣の人との隙間もない状態では動けそうになかった。

車内アナウンスで次の駅を告げる放送が流れる。
「あと2駅ですし…我慢しましょう。」
「ちっ…仕方ねぇけどな。」
「そうですね。」
2人ははぁと溜め息を付いた。


別に火神も黒子もこの状況は嫌じゃなかったりする。
そう、ただ困るのだ。

((頼むから、心臓の音が聞こえてませんように!!))

ぶっちゃけ有り得ないくらい、火神も黒子もドキドキしていたのだ。


火神と黒子は抱き合っているというおいしいハプニングと、相手にドキドキしてるのがバレてしまんじゃないかという不安で2倍ドキドキしながら過ごした。

そうしてるうちにアナウンスが到着駅を告げた。



「やっと着いたな…」
「はい…」
緊張のせいで妙に疲れてしまった上に人々を掻き分けて出てきたので、まだ朝と言うのにかなりの疲労感に襲われる。



でも、本当はもう少しあのまま電車に乗っていたかった。
なんて…



(何考えてるんだ、オレ!?)
(何考えてるんでしょうか、僕は)
 
ふいに浮かんでしまった考えを消すように2人は同時に頭を振ったのだった。





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