・Novel

□君に誓う(順→リコ)
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ピーッ!!

たった二点差。流れは此方にあってもう直ぐで追い付ける。
そんな最中、無情にも試合終了を告げる笛が鳴った。
わっ!!、と盛り上がる相手チームと「終わったのか…」とポツリと誰かが呟いた言葉がそれを実感させる。

(負けたのか…)
負けた悔しさや悲しさより試合が終わってしまった喪失感の方が勝っていた。日向は眼鏡をズラして熱くなった目頭を押さえた。
整列し挨拶する時、隣の伊月の声も僅かに震えていた。
 
 
 
「監督…ゴメン」
ベンチに戻り日向はリコに言った。
また目頭が熱くなるのを感じる。何人かのすすり声も聞こえた。
「コラッなにへこんでるの!!」
ペシっ、ペシっ、ペシっとリコはレギュラー陣の頭をリズミカルに叩いた。
「一年目で日本一になれる程甘くないわ。ただ負けは負け。明日からは今まで以上にビシバシいくからへこんでる暇なんて無いわよ!!」
来年こそは日本一になるんだからね。そう言ってリコは不敵に笑った。
リコのおかげでお通夜のようだった選手達の間に風がふいたようだった。
「だな。監督明日からビシバシお願いします!!」キャプテンである日向がそう言うと部員たちは「お願いします!!」と続いて言った。
「宜しい。それでこそ誠凛バスケ部よ。」
リコは満足げに笑った。
 
 
 
 
 
 
 
いつもと違いこの日は一度学校に戻り、軽いミーティングをした。
「今日は明日からの練習のためにゆっくり休むのよ。じゃあ解散!!」
リコの言葉でみんな思い思いに帰り支度を始め、帰った。

「やっぱ監督はすげーよ。強いっつうか、モチベーションが高いっつうか…とにかく尊敬するよ」
帰り道で伊月がしみじみと言った。
「だね。そんじょそこらの大人の監督よりずっと良い監督だよ。俺、本当に誠凛に入って良かったと思う。」
小金井の言葉に「だな。」と日向も同意し、水戸部も黙って頷いた。
「監督の為にも絶対日本一にならなきゃだな。」日向がそう言うと「当たり前だろ!」と伊月と小金井が答え、水戸部も力強く頷いた。
 




「…あ」
暫く歩いてから日向が何かを思い出したように立ち止まった。
「どうした日向?」
小金井が不思議そうに尋ねた。
「…学校にタオル忘れた。ちょっと取りに行って来るから先帰っててくれ。」
そう言って日向は今来た道を戻った。



 



 
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