・Novel

□アイツは(黄+笠)
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「笠松先輩!」
教室を移動中、名前を呼ばれ振り向くと此方に小走りで走って来る黄瀬が見えた。
「んだよ、黄瀬」
溜め息混じりに言えば、
「特に用はないっスよ?ただ先輩が見えたからあいさつしようと思っただけっス」
と言ってニコニコする。
俺はもう一回溜め息を付いた。黄瀬は元々人懐っこい奴だと思うが、最近更に懐かれた気がする。いや、かなり懐かれた。「先輩次移動教室なんスか?」
「あぁ。お前は体育なのか?」
体育着を手に持っている黄瀬を見てそう言った。
「いえ、俺は体育帰りっス。女の子達に捕まってて帰るの遅くなっちゃったんスよ」
「…そーかよ。」
話してる途中、ぐーと黄瀬の腹が鳴った。結構大きい音で。
「あ、いや、体育一生懸命やったせいでお腹すいたみたいっス」
「…ぷっはは!イケメン台無しだな。」
まさかの腹の虫と照れて慌ててる黄瀬が面白くて思わず吹いた。
「そんなに笑う事ないじゃないっスか!」
ムスッとしながら黄瀬は俺を睨んだ。
「わりーわりー。ほらこれやるよ。」
まだ笑いながらポケットをゴソゴソと漁り飴玉を2、3個黄瀬に差し出した。
「いいんスか?ありがとうございます。」
黄瀬はさっきまで拗ねていたのを忘れたかのような満面の笑みを向けた。
あー‥こういう笑顔で女の子はおちるのか。


「ほら、とっとと教室戻んねーと授業遅れっぞ。」
黄瀬に肩パンを喰らわす。
「いてっ!わかりましたよ〜。じゃあね、先輩」
「おぅ、じゃあな。」
俺は小走りで教室に戻る黄瀬をやれやれと見送った。





 
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