・Novel

□色のない世界(火黒)
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黒子が風邪を引いつて3日間学校を休んでいる。
…にも関わらずついつい黒子を探したり、呼んでしまったり、
オマケに部活のミニゲーム中には「黒子、パスよこせ!!」と大声で言ってしまい部員全員からは憐れみの目を向けられ、監督には散々からかわれた。

(…末期だ)
俺は何度目かわからない溜め息をついた。


部活後はいつも通りにマジバに行った。
いつも通りに大量のハンバーガーをトレーに乗せいつもの席へ。しかしいつもの目の前でバニラシェイクを啜る姿は無い。

ハンバーガーを次々と口に運んだが、味は感じなかった。

(なんかアイツがいねーとつまんねー…)

学校も部活もいつもより張り合いがない。
食べ物も美味いと感じない。
黒子は影が薄いのにいないと周りのモノ全てのモノが味気なく、世界から色が無くなったように感じる。

そんな自分の思考に頭を抱えた。
俺はこんなに女々しい奴だったのだろうか。

ふと携帯を見つめた。
メールは毎日していたが、電話は黒子が喉が痛いと言っていたのでしていなかった。
…因みにに見舞いは風邪がうつると行けないからと黒子から禁止されていた。

(もう電話ぐらいしても大丈夫だろ)
俺は残りのハンバーガーを口に突っ込み、店の外に出てアドレス帳の黒子の番号選んで通話ボタンを押した。
数回のコールの後黒子が出た。
『はい、もしもし…』
久しぶりに聞いた黒子の声。風邪のせいか多少枯れていた。
「よぉ、少しはマシになったのかよ。」
『はい、明日には学校に行けそうです。まだ部活には出れませんが…』
「たく、早く治せよ。お前がいねぇと学校も部活も…なんかつまんねぇ」『治します。僕もこれ以上バスケが出来ないのも火神君に会えないのもごめんです。』
その黒子の言葉に余計に会いたい気持ちが募った。

暫く会話をして名残惜しいが電話を切った。
(明日には来れるのか…)
そう思うとだいぶ沈んだ気持ちがマシになった。

家へと歩を進めつつ、明日の事を考えた。
朝は迎えに行ってやろう。
昼は一緒に飯を食う。
放課後は…部活には出れないと言ってたがバスケ好きなアイツの事、手伝いには来るだろう。

(そうだ…)
こんな気持ちにさせられた不意打ちにキスでもしてやろうか。
黒子は意外と不意打ちに弱いからきっと照れるだろう。真っ赤になりつつも可愛げのない憎まれ口でも叩くかもしれない。
(まぁ…そんなトコも可愛いんだけどな)

そんな事を考えてたらすっかりヘコんだ気持ちは無くなっていた。


今日は早く目を覚ました。
手早く支度を整えて黒子の家へと向かった。

家先で黒子が出てくるのを待った。
間もなくカチャリと玄関が開く音がした。
「火神君!?」
俺が迎えに来ると思わなかったらしく黒子は驚いた声を出した。
「よぉ、久しぶりだな」
「お久しぶりです。どうして此処に?」
黒子は首を傾げて聞いた。
「電話で学校来るって言ってたから迎えに来てやったんだよ」
そう言って黒子の頭をくしゃくしゃと撫でた。いつもなら「やめて下さい」とか言って手を振り払うのに今日はされるがままになっていた。

黒子がくしゃくしゃになった髪を直し終わってから「ほら、行くぞ」といって手を差し出すせば、軽く握られたので強く握り返した。

朝の街はちらほらと人もいたが、黒子も嫌がる様子がないのでそのまま手を繋いで歩いた。


人通りの無い道に差し掛かり俺はふと思い出し黒子を振り返った。
そして身を屈めて何かを言いかけた黒子に不意打ちのキス。
触れるだけのキスでちゅっとリップ音をたてて唇を離した。

「火神君、急に、なにするんですか」
不意打ちのキス黒子は真っ赤になっていた。
そんな黒子の様子に色が無かった世界が色付くのを感じ、どうしようもなくコイツが好きなんだと思い知った。

何となく気恥ずかしい。多分俺も赤くなってるんだろうな。
「うるせー。3日も休んでたお前が悪い」
そう言って黒子の手を強引に掴み再び歩き始める。



今日は学校も部活も張り合いがあり、黒子と食べたハンバーガーは美味かった。





ー君が居れば僕の人生薔薇色さ!!ー




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