・Novel

□逢ふことの絶えてしなくはなかなかに(黄→黒)
1ページ/2ページ

監督から次の練習試合の相手を聞いた時は驚いた。
それは中学の時一番仲良しで俺の大好きな黒子っちの行った誠凛高校だった。高校に入って初の試合相手がそうなんだから運命じゃないかと思ったり。

中3の進路決定の時、一緒の高校に行きたい、高校でも一緒にバスケをしたいと散々海常高校に誘ったけど断れ続けた。それは他のキセキも同じようだった。
しかも彼が選んだのは自分や他のキセキが行くような強豪ではなく無名の新設校で正直反対だったが、黒子っちにも何か考えがあるのだと、それに黒子っちが決めた事なんだからと無理矢理納得したのだった。


別々の道を選ぶ事にした俺達。
もう会うこともないかもしれない、そう思ってた矢先にこの知らせだ。
(練習試合の相手、黒子っちの高校なんスね…。よし、試合の前に黒子っちに相応しい学校かどうか調べてやるっス!)
俺は黒子っちが行った高校へと急いだ。


「おーここか誠凛。さすが新設校、キレーっスねー」
体育館に向かって歩いて居ると女の子達が妙にざわめき合っているのに気がついた。
あ、マズイ。
そう思った時にはもう遅くて沢山の女の子が寄ってきた。
(あーもう!早く黒子っちに会いたいのに!!)
俺は女の子達を適当にあしらいつつ体育館へと急いだ。


「やっとついたッス…」やっとの思いでついたのに相変わらず黒子っちはつれなくて…まぁそんなとこも好きなんだけど。
久々に黒子っちと会話を交わしていたのに邪魔者(ボール)が乱入して来た。
「せっかくの再会中ワリーな。けどせっかく来てアイサツだけもねーだろ。ちょっと相手してくれよ、イケメン君」
それを投げてきたらしい赤髪は俺にそう言った。
火神とか言う彼はさっきのプレーを見た限り、ここのエースだろう。
(誠凛が黒子っちに相応しいか見極める為には都合がいいかもしれないっスね…)
「よし、やろっか!」


相手をしてみたのはいいけど正直拍子抜け。こんなんじゃ黒子っちの才能は宝の持ち腐れだ。
そう思い何度目かわからない勧誘をした。
「海常おいでよ。また一緒にバスケやろう。」
だが黒子っちもいつものようにあっさりと断った。…もう少し考えてくれてもいいのに。

黒子っちは言った。
「なにより火神君と約束しました。キミ達を…キセキの世代を倒すと。」
こんなに実力の差を見せているのに海常に来る気はないと言う黒子っちが信じられなかった。
しかも火神とか言う赤髪と約束したからと言う理由で。

「まぁ…いいっスよ。試合が終わったらわかるっスよ。此処にいるのとウチに来るの、どっちが日本一に近づけるかって。返事はそれからでもいいっス。」
実際に試合をしてみれば黒子っちも海常と誠凛、俺と彼、どちらが日本一を目指すのに相応しいかわかる筈だ。
そう思い今日の所は帰る事にした。
だけど帰り際、ふと黒子っちを見て驚いた。
黒子っちは帝光では見たことのない楽しそうな顔で火神に話かけていた。


誠凛からの帰り道、俺は後悔していた。
中3のあの時、何故彼を無理矢理にでも自分と同じ学校に入れさせなかったのかと。あの時納得してしまった自分が死ぬほど憎い。
(黒子っちもせめて他のキセキと同じ学校を選んでくれれば諦めがついたのに…!!なんで誠凛を…アイツなんかを選んだんスか!?)
大好きな黒子っちさえも今だけは憎く感じる。


(試合では完封ないくらいに負かせてやる!それで黒子っちに俺を選んだ方が正しいんだって思い知らせてやるっス!!)
俺は心の中でそう決心した。





ー逢ふことの絶えてしなくはなかなかに
人をも身をも恨みざらましー
(いっそうもう逢うことがなかったら、あなたや私自身を恨めしく思うような事はなかったのに!)





 
あとがき→
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ