short story

□拾い物(者)にはご注意
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俺は思う

やっぱり生き物を飼う時は慎重に考えてから決断するべきだと



拾い物(者)にはご注意


「どうしたの、香織…眉間に皺なんて寄せちゃって」

今、俺の視線の先で不思議そうに首を傾げている男が居る。
20歳過ぎのデカイ男がやるには余りにも不自然…かつ異様な行動だ。

…そのまま首がもげてしまえば良いのに

『あぁ…痛感しているんだ。生き物を飼う時はもっと慎重であるべきだと…』
「生き物?香織何か飼いたい動物でもいるの?」

目の前に居る男はそう言うと目を大きく見開いた。

…そりゃそうだ。俺ならきっと動物を飼っても世話をろくにしてやれない
出張とかもあるし、帰りがいつも定時なんて仕事をしているわけじゃない。おそらくペットを飼っても寂しい思いをさせるだけだし…

いや、じゃなくて。んな事じゃなくて

『既に飼っているんだ。大きいパンダを』

パンダ?と米良は部屋の辺りを見渡し始めた。
…本当にいたら普通に気付くだろう…笹とかバリバリ食べてる音とか聞こえてるはずだろう…
余計わからなくなったのか米良は俺に質問をまた投げかける

「パンダ…なんて居ないみたいだよ?どこに居るの?」


…まだ気付かないのか?
『米良』
「ん?どうしたの、香織」
『だから米良』
「だからなしたのって」
『米良ってパンダを飼っている』




……………




「はい!?」
あ、ようやく気がついた?
「いやいやいや、俺パンダじゃないしね?しかも飼ってるって何!?っていうか今更何悩んでるの!!?」
…突っ込み所が満載過ぎたらしく米良が全て言いきった後にはゼーゼーと息切れが聞こえる
そんな変な事言った?俺

『パンダみたいじゃん…スーツとか髪の毛は白いくせに眼帯とか手袋は黒い』
「…はぁ…まぁ、そう言われたらそうかもしれないけどね?」

米良は顎に手袋をはめている方の指先を当てながら考えていた

『それにご飯は作らないし、言わないと掃除もしない。洗濯機なんてお前、この部屋に引っ越してから回した事あるのか?』
「うっ…!」
『もう一つ言えばこの間なんて買い物頼んだのに、お前自分の好きな物ばっかり買って全然注文通りの物買ってこなかったじゃないか。そんな人間が出来る普通の事も出来ないお前はペットで充分』
「うぅう……」

言い返せないのか、いつの間にか正座をしながら俯いていた。まぁ俺間違った事言ってないしね
「で…でもやっぱりそれも今更な気がしない?急になんでそんな事言うの?」

そう、俺が今更こいつを飼ってしまった事を後悔してるのには理由があるのだ
今までは言わないでいたが…しかし今言わないと後からが怖い事になる
これからパートナーとして一緒に過ごして生きていかなければならないのだ、ハッキリ言うのも時には必要











『その変なコレクションをもう増やすな』

正座をする前、米良は自分のコレクションを磨いていた
変な顔の人体模型やら外国の民芸品やら…この半年で俺の部屋だった場所はおかしな美術館になりつつある
「えぇ!?こんなに素敵なのに!?」
『これ以上増やすんならペットとしても不合格だ、出てけ』
「か、香織ぃいいぃい!!!」


久しぶりの休日に米良の叫び声が響いた
 

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