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□緑光の物語
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HAPPY VALENTINEはこんなやつです。
少しネタバレ気味。

オリジナル設定等が溢れかえっていますのでご注意を!

長い・・・です











「最近ミカゼの様子変じゃないか?」

いつもどおりの昼飯
近くに座ったルークが、まだ姿を現さない少女のことを心配げに言った

「やはり、世界樹のこと、気にしているのでしょうか・・・」
「そ、そんなことないよ!プ、プレッセアが気にすることじゃないしね!」
「でもミカゼ、ご飯の時間は絶対守るよ?」
「確かに最近彼女よくぼーっとしているわね」

仲間たちが口々に言っていく

先日のあの事件で、世界の状況は大幅に変化した
人々の世界は負に蝕まれてく
俺達は事実となった現実を引き止められなかった

それを危険視した船の中の学者たちは研究部屋に篭りっぱなしで、なかなか姿を現さない

「だいぶ応えたんじゃないの?世界樹のこと」 
「そうかもな」
「・・・・・」

その場を共にしたプレセアもうなだれる
彼女も世界樹を傷つけてしまったことの責任を重く感じているようだ

そこに凛とした声が響いた

「大丈夫だよ。ミカゼだもの」

ざわめいていた室内がすっと静かになって皆は一点の桃色を見る

「みんな今まで彼女と一緒にいたならわかるでしょ」

カノンノが食器を片付けながら言った

「信じなきゃ、ね?」

軽く首を傾げてにっこり笑う姿は濁りがなかった

(美しきかな、信頼。ってね)

確かにあの少女は挫けるということをまだ知らないみたいだし、カノンノの言うとおり信じてやるのも良いことなのかもしれない

「・・・そーよそーよ。カノンノちゃんの言うとおりミカゼちゃんなら大丈夫だって」
「ってかお前も少しは責任感じろ」
「ひでぇな。感じてるよ俺様びんびん感じているよ」
「うそ付け」
「嘘じゃないってぇ。ああ、俺様のガラスのハートがピキピキと音を立てて・・・」
「だ、大丈夫ですか!?」
「心配ないよ、愛しのエステルちゃん…」
「オイコラ」

「はいはい、食事中ですよー。皆さんお静かに」

適当な茶番劇を仕立て上げていたら、パニールがいい感じに止めてくれた

「賑やかなのはよろしいですけどもう少し、ね」
「はーい」
「さてと、ごちそーさん」
食べ終えた食器を手に持ち席を立つ
するとパニールが
「あ、ゼロスさん。食器はそのままで」
といい、パタパタと耳元へ飛んできて
「ミカゼさんなら甲板ですよ」
「…どーも」
そっと耳元でささやいてくれた。
ありがたく思いながら言われた通り食器はそのままに、また騒がしくなった食堂をあとにする

(さてと…)

ホールを抜けて海の音がする方へ足を運ぶ
ドアを開けて風を感じると、そこには世界樹を見つめる少女の姿が

「ハローミカゼちゃん」

いつもの様にハートなんか散らばしちゃってミカゼに近寄る
振り向いた少女の頬に流れる雫を見てああやっぱりと思った

「飯食べないのかい」
「…今日はなんだった?」
「ん?カルボナーラin温泉卵と野菜サラダ。デザートは野苺のジェラート」
「食べる」

涙を隠さず真顔で食べる宣言した

「みんな心配しているぜ。はよ行こうや」
「うん、もうちょっと…」
「アイツ待ってるのか」

核心突いたつもりで言うとやはり図星だったらしく目を見開き、少し驚いて俺を見る
でもすぐに視線を落としてそっと、呟いた

「あの人、きっとまた私の事殺しにくるわ」

生み出てきてすぐに、あの少年はミカゼを睨んだ

あの時、ミカゼに一瞬の迷いと不安が生まれた事を俺は見逃さなかった

だって瞳が、世界樹を思い出させる深い緑の色が揺らいだのだ
それは世界樹と意識を共にするように
同時にざわざわと不安になるような風に吹かれる世界樹を感じた

(俺様一応世界樹を奉る神子だもん)

「怖い?」
「怖い」
「悲しい?」
「悲しい」

記憶喪失とはいえ、まだ愛されることしか知らない少女を不安が包んでいくように見えた


なのに、


「ミカゼ」

名前を呼んだ時の少女はもう泣いていなかった

瞳を輝かせて世界樹を見つめる

「ゼロス」

その瞳のまま、俺を見た

ああ、この光だ
俺が感じた光

「どうしたい」
「助けたい」


真っ直ぐに見据える瞳は世界樹と同じ光を帯びていた


「オーケー。俺様もそのお手伝いしちゃう。任せといて。」
「本当?」
「ああ。あのヒンシャク坊主、一緒に助けてやろうか」
「ゼロス!」
「うおぁ!」

飛びついてきた少女を受け止める
それは羽のように軽かった

「ありがとう!」
「いーえ」

にっこり笑う姿を、
最高に根性腐ってたあの頃から救い出してくれた愛しい女と故郷にいる妹を思い出させた

(まぁ、こんな素直に笑わないか)

あの少年はいつかの自分に似ていた気がして
この少女はいつかの彼女に似ていた気がした

「おなか減った!食堂行ってくる」
「はいはい」

ミカゼはだっ、と小走りで甲板を抜けていった


遠くに立つ世界樹を見る
相変わらずそこにあって、変わらない美しい光を放っていた

根っこ、痛いか世界樹さんよ。
悪かったな、守れなくって。
でも、多分大丈夫だろ?
あんたの産んだ子が、きっと助けてくれるだろうから。

「伝説の幕開け・・・か?」

そう思うと自然と口の端が上がった
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