□風葬
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崩れ落ちた体を抱えて、瞳の光が消えた事を確認する。
胸を刺した刃は、まだ体に埋まっている。

ああ、死んだ。
佐助は、死んだ。
私が殺した。

ここは、戦場。


見開いた瞼を伏せて、私は息をしない唇に己のそれを重ねる。冷たくて、熱を全て奪われるとも思ったがそれも構わず深く長く長く付けた。


この唇は何度私の名前を呼んだのだろうか

この胸は何度私を想って泣いたのだろうか


私はどうして一緒にいようと差し出されたこの手を、握らなかったのか

(そう、私は知っていたのに)


唇を離し、男の顔を見る。
血まみれの手で、頬を撫でるとそこは赤く染まった。
色付いて、まるで生きているみたい。


「愛してると言って。」


私も愛しているから

(嗚呼。なんて、なんて最低な女!)

私が死体にした彼にしか、伝えられないなんて

勿論彼が返事をするわけなくて、ただひゅるりと風が鳴るだけ。



ねぇ、佐助。

世界に本当に輪廻があるのなら、
私達はまた一緒の世界に生まれてくるのかな。

平和な世界とか、いいよね。

でももしそうならその時、お前は私を忘れていて。


私も、忘れてるから。







忘れる、かな





ほろりと頬を伝った涙は吹いた風に吹き飛ばされた







(さようなら。醜い私を愛した愛しい男。)








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