戦
□鋼の心
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<決意の眼>
「まつ、ついてくるか」
「何を今更」
彼女は俺の目を見て言った
ああ
俺はこの真っ直ぐな瞳になんど助けられただろうか
何度恋しただろうか
<人>
降り注ぐ雨は止みそうに無い
「人の命をどうこうする点ではあいつらと俺たちも大して差はねぇ」
「しかし、それは大人の理屈。たとえ一群の大将とはいえ、あれはまだまだ子供ですぞ」
「あいつの選んだ道だ。無理やり納得していかなきゃ進めねぇさ」
「なぁ、いつき」
膝を抱えて墓石に背を向けいつきは震えていた
「いつまでそうしているつもりだ」
「・・・うるさい」
「人殺しだ悪魔だ言われても侍倒して世の中平和にすんじゃねぇのか?これだけのことで立ち止まっている暇はねぇだろ」
「・・これ、だけ・・?」
「政宗様!少し言い過ぎでは」
「うるせぇ、小十郎」
「これだけの、こと・・?」
やっと顔を上げたいつきの顔は雨の雫と涙と泥で濡れていた
「うん、そうだ。オラたちは決めたんだ。だけど、だけどもな政宗。おめぇさんもオラは魔王でも悪魔でも、ましては本当の龍でもねぇ。なんと言われようが人間なんだ。人一人救えない!」
小さないつきの大きな悲鳴
「ちっぽけな、人間なんだ!」
「帰るぞ。風邪引く」
自分だって、一人の女の子を救えない、ただの人間だ