□世界で一番不器用な愛しい人
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「濃、何処におる」

愛しい人の声がする

私を名を呼ぶ事なんて滅多にないのに

「上総之助様、何用でございますでしょうか」
「来たか」

すると上総之助様は私に近づいて、いきなり頭を掴んだ

「ど、どうされましたか!?」
頭の手をわさわさと動かす
乱暴だけど、私の頭を撫でたのだ
整えた髪はそれによりぐちゃぐちゃに乱れる

「上総之助様…?」

普段からして有り得ない行動に驚き、目を見張る

「…此度の戦、御苦労であった。これは、礼だ」
「それは…どういう」
「丸はこうすれば喜ぶ。だからお前も、こうすれば喜ぶかと思った」
「!」


嗚呼、なんて不器用な愛しい人か


「上総之助様、濃めは心底嬉しゅうございます」
「…そうか」

顔には出さないが何か恥ずかしそうにそっぽを向いた

でも
まだ頭には、血に塗れた暖かい大きな手




この時があるからこそ、私は間違っていないと思える





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