□ドロップ
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「ドブで溺れて死ねっ」


ガタガタゴトゴトギシギシドスンと軋む天井に小十郎が不安を感じ、行ってみればそれは修羅場真っ只中であった。

スローモーションで見えた、少女が我が主をそれはそれは美しいフォームで蹴り飛ばす瞬間。

ドタバタン

床が外れないよう祈りながら小十郎はその光景を目に焼き付けた。





「政宗様」
「…んだよ」

仏頂面した政宗は胡座をかいて目の前に正座する小十郎から出来るだけ視界を外していた。小言は耳タコだと言いたいが、流石にマジでキレかけている小十郎にそんな言葉をかけられない。隣に座るかすがは小十郎に視線で出来るだけヘルプを送っていた。ギシリとかすがの腕を掴む政宗の手に力が篭る。


「おいたが過ぎます」
「HA!小十郎テメーも俺に盾突く気か?」
「滅相もございません。ただ貴方様の御可哀相な頭にもう従者として涙ちょちょぎれで、小十郎いてもたってもいられなくてお声をかけた所存でございます」
「………」
「こんな夜遅くまで嫌がる女性を家に連れ込んだ上に疚しい行為を強制するなどという実際セクハラで訴えられても仕方がない事をなさるのですから、そりゃ相手に飛び蹴り喰らうのも致し方がありませぬ」
「………」
「さぁ堪忍してかすがの手を離して下さい」
「………チッ」

名残惜しそうに、政宗は手の力を緩める。すぐにばっと腕は離れ、かすがは自由の身となり小十郎に駆け寄った。

「片倉ぁいつか助けてくれると信じてたぞ!!」

感情的になってしまい勢いよくかすがは小十郎を抱きしめる。それを満更でもない様子で小十郎が受け止めたから政宗の低い沸点はすぐに超える。が、下手に手だしするとかすがの美しい肢体による痛いドロップキックや小十郎の極殺モードが発生するので必死に抑えた。


「家へ帰りな…って、暗いな。仕方がない、俺が送って行ってやる。政宗様バイク借りますよ」
「ああ!ありがとう!」
「勝手に決めんなや!俺が送る」
「送り狼にでもなるつもりでしょう?」
「死ねばいい」
「畜生おおお!!」




ブロロロロ…とバイクのエンジン音が夜道に響く。

「なんであんな奴の右腕なんかしてるんだ」
「怒らないでくれや…ってのは無理があるが、まぁあの方は絶賛発情期だから許してやってくれ」
「お前はいいやつなのに」


素直に述べる彼女が、政宗に対して暴力的で素直になれないのは別の感情を抱いているからだと、小十郎は知っているのは多分自分だけと思う。それがとても悲しい事だと感じている自分がいることにも気が付いていた。


かすがはピッタリと小十郎の腰に抱き着いていた。
どうしても当たる胸の感触や、預けられた頭の重みになにか熱いものが込み上げてきたが小十郎はそれを冷静に受け止め管理する。

(このまま何処かへ行ってしまいたい…なんてな)

それこそ自分が送り狼だなと自虐しながら、小十郎は頼りない鉄の塊に込める足の力を強くした。






リクエスト:伊達かすから小十郎がかすがを掻っ攫っていく小十かす

(言い訳)
なんだか中途半端。シリアスにしようか悩んだ揚句にギャグでやっぱり政宗様が可哀相になった。




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