□愛を込めて
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「ご飯だべよー!」


おぼんで沢山おにぎりを乗せた皿を運ぶ。そこには蘭丸や明智の兄ちゃんがそれぞれ待っていた。

「遅いーなにぐずぐずしてんだよ」
「うっさいべ。手伝わないおめーさんの方が悪いだ」
「ほらほら二人とも」

あっかんべーをするオラ達を織田の姉ちゃんが苦笑いしながら止めた。

「蘭丸君。いつきちゃん、頑張って作ったんだからね?」
「……はーい」

と、大人しく返事をしたがすぐにオラの方を向いて「お前のせいで怒られたじゃん!」という視線で睨まれた。

…ふん。オラは今とーっても大人の女性な気分なんだべ。それくらいで怒ったりしない。

「はい。どうぞ」

ツンとした表情で握ったおにぎりを蘭丸に取り分ける。

「なんだよ…」
「べっつにー」

「それじゃあ頂きましょう」
「光秀が仕切るな!」
「はいはい。では頂きます」
「「頂きまーす」」


合掌してそれを合図に皆自分の箸を握った。

オラは箸を握ったまま料理に手を付けないで、蘭丸をじっと見た。あ、おにぎり。食べた。

「…………お前が作ったんだよな」
「ああ」
「ふーん…」

一口二口、そしてちょっと多めの三口目。

「……お、いしいよ」
「ほっ!本当!!?」


ちょっと俯いて恥ずかしそうに蘭丸は言った。跳びはねたくなるくらい嬉しかった。




それは一時間くらい前のこと。



「んしょ…んしょ」
「うん。そうよその調子」

ぎゅっぎゅっと両手にある白米の塊を握って握って握りまくる。隣で織田の姉ちゃんが割烹着を着て米びつから炊きたての白米をボウルに移している。

「わざわざありがとうね」


土曜日の午前中。蘭丸に誘われて織田家に遊びに来ていた。たーくさん遊んで気がつけば11時30分。お昼の時間だと迷惑になるのもいやだし早く帰ると思ったオラを織田の姉ちゃんが「せっかくだしお昼も食べていきなさいな」と誘ってくれたのだった。

織田の姉ちゃんとオラ、そして遊びに来ていた前田の姉ちゃんとともに広い台所(キッチン?)で昼ごはんを作っていた。

「いんや。お昼ご馳走になるんだからこれくらい当たり前だべ」
「光秀にも言わせたいわ」


姉ちゃんはうふふと上品に笑って、自分も熱々の白米を片手にこんもりと乗せる。居間の方から明智の兄ちゃんが呼びましたかー?と言うのが聞こえてきた。姉ちゃんと顔を見合わせて、笑った。

「そのおにぎり、何をいれますか?」


ぴぴっと電子レンジの音がして慌ただしく前田の姉ちゃんが掻き回していた味噌汁の鍋の火を止めてレンジの中から昨日の織田家の晩飯だったという焼き鮭を取り出した。


「おにぎりは塩だけ!小十郎から教わったべ」
「まぁ男らしい!流石伊達家の方ですわね」
「じゃあその鮭は解して私のに入れるわ」


二人はオラが一つおにぎりを作るうちに着々と昼ご飯の支度を終えていく。織田の姉ちゃんが作ったおにぎりは綺麗な三角形。オラのはどう頑張っても丸。
(蘭丸に食わせるのに…)

「上手くいかない…。姉ちゃんどうしたらそんなに三角になるんだ!?」
「まぁ!いつき殿。そんな事、簡単でございまするよ」
「お、教えてけろ!」

必死に前田の姉ちゃんに縋り付くと隣の織田の姉ちゃん共々クスクスと笑い出した。

「いつきちゃん。いい?美味しいご飯を作る秘訣はね…」





と、まぁおいしいご飯を作る秘訣を教わったのだが。




「まぁこの間食べたかすがのクッキーよりはだ!濃姫様やまつのご飯の方が美味しい!!」
「そりゃそうだべ!」
「それなお前握る前に手洗ったかぁ?ばっちいからちゃんと洗えよ!!」
「なっ…!当たり前だべよ!石鹸使ってきちんと洗ったべ!!」


あっかんべーしながらも、その後もオラの握ったおにぎりをぱくぱく食べてくれた蘭丸に心が暖かくなってついつい笑ってしまうと蘭丸はまた気持ち悪いとか言ってオラをいじめてきた。

「う、うるさいべ!だってオラのおにぎりおいしそうに食べてくれるから!」
「な、なぁ!?」

その言葉を聞くと蘭丸は顔を真っ赤にして、怒鳴った。

「別に米と塩のおかげだろ!ぼ、僕お前の作ったのがおいしいなんて一言も」
「さっき言ったべ!それに米と塩だけでねぇ、オラの愛情も篭っているんだからな!」
「ば、ばっかじゃねぇの!!?」






「…青春ですねぇ」
「お前が言うと胡散臭いわよ」
「でも二人とも嬉しそうですわ」


大人三人は微笑ましく子供二人を見ていた。

「秘訣は誰にも劣らない愛情…てね」
「おや帰蝶。この握り飯凄く美味しいのですが私に対しての愛情が篭ってるのですか」
「それはただ私の実力よ」

近づいてきた光秀にぴしゃりと濃姫は言った。

「この二人も変わりませんこと…」

まつは二人にばれないように小さくため息ついた。




「蘭丸」
「んだよー」
「美味しい?」
「美味しいってば!」
「えへへへ」
「うー…あー…もう」







リクエスト:現代ほのぼの蘭いつ


(言い訳)
ほのぼのという基準が理解できないアホな子なのでほのぼのになっているか心配です。


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