□あまいま
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ちゅちゅと頬や額、唇に浴びさせられる口付けの嵐。お返しと言わんばかりに俺様も彼女の柔らかい肌に唇を触れる。

「ん…さすけ。くすぐったい」
「我慢してよ。ねぇ…いいでしょ?」

向かい合うように抱きしめて、どこよりも柔らかい谷の間に顔を埋めて嘆く。彼女は擽ったそうに体を捩じらせて、俺の後頭部に手を伸ばしてぎゅっと抱きしめてくれた。髪の毛を弄られる。心地良い感触だ。
好きだよって小さく呟くと彼女も優しく笑って私もだと抱きしめる力を強くしてくれた。嗚呼なんて至福の時。このまま時が止まればいいのになどという下らない思いをしてしまうほどこの甘い関係に酔いしれていた。











「死ねぇぇぇぇぇぇ!!!」
「ぐぼぁっ!」


自室の襖が勢い良く開く、というかぶっ壊された凄い音が響くとほぼ同時に背中に言葉にできないほどの衝撃。これは片足の裏に全体重と筋力すべてを注ぎ込んで俺に食らわせたドロップキ…あ、言葉にできたじゃん。ん?俺今何言おうとしたんだっけ。竜の旦那の言葉が移っちまったかな…。

「お、おま、お前というやつは…!!今まで以上に見損なったぞ死ね!!」

顔を真っ赤にして倒れこんだ俺に罵声を浴びさせるのは他でもない彼女。

本物の、ね。


「…これにはひじょーに深い理由がありまして」
「理由など知るか!ほら早くその気持ち悪いの片付けろ!!」

ビシビシッと指を刺したのは、俺の下で苦しそうにもがく彼女。いたいぞ佐助ぇと甘い声で言ってくるもんだからまた胸がきゅってなってしまった。…それに気がついたかすがが苦無を構えたから早く片付けることにする。
ちょっと念じればどろんと腕の中の彼女は消える。まぁ、要するにさっきまで戯れていた彼女は俺が術で出した偽者のかすがだったのだ。

「だってー。あまりにかすがちゃんが相手してくれないから俺様色々な欲求に耐えられなくなって〜ん」
「気持ち悪い言葉遣いをするな!」

心底嫌そうな顔をしてかすがは俺を睨む。その視線はしかとしてするすると体を引きずってかすがへ近づく。

「ねぇねぇ。ほら最近会ってなかったしさぁ〜イイコトしようよ。ねぇ」
「近寄るな…!」

ひしっと足にしがみ付いて逃げられないように固定する。暴力は振ってきたけどかすがは逃げる気はないようだ。しばらくして諦めた様に深く息を吐いた。力任せに足から俺を引っぺがし、その代わりかすがはしゃがみこみ俺と視線を合わす。

「なぁに?」
「……」

整えられた眉をひそめ、咎めるような目つきで俺を見てくる。

「怒ってる?」
「…馬鹿」
「ごめんね」

そろそろっと前髪に手を伸ばし撫でる。やっぱり本物、全然違う。髪の柔らかさとか匂いとか。


「偽者で…満足するな」
「へっ」

消えそうな声でそう呟いた。顔を真っ赤にして居た堪れないようにもぞもぞと自分の髪の毛を弄っている。

嗚呼!もう!

「可愛いっ!」
「んにゃ!?」

勢い良く抱きしめるとこれまた可愛い声が聞こえてきた。丁度目の前にある胸に顔を埋めて感触を堪能する。柔らかいだけじゃ駄目だ。やっぱりこの熱と匂いがなければ。かすがは抵抗したが胸の谷を軽く舐めてやったら軽く媚声を上げて、それから大人しくなった。

「馬鹿」
「何とでも」
「馬鹿馬鹿年中発情期変態猿野郎」
「…それはちょっと傷つくな」
「もう…ばか」




その「ばか」という言葉にどれだけ愛が込められていますか?
















リクエスト:佐かすで甘いの


(言い訳)
うちのかすが、多分初めてこんなにデレた。


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