三万打!!

□暖々
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「なんでこんなことになったんだ」

白い毛糸のマフラーに顔を埋めたかすがは顔を真っ赤にしながら呟いた。
直ぐ傍の熱を妙に意識してしまって困惑している。

「隣に居るのは蓑虫…いや、害虫、屑、毛糸カス…」
「無機物になってる。ひどくね?」

それに反して俺はにやにやと、きっと誰が見てもご機嫌と分かる表情。
かすがと同じ白いマフラーを巻いているのだ。そりゃもう顔も歪むって。


なぜこんな幸せな状況になったかと言うと、例の如くかすがが編み方知らないくせに上杉先生宛てのクリスマスプレゼントを贈りたいと俺にせがんで来た。(いつの時代だという疑問は伏せておいた)
「ひとつだけ言うことを聞く」と条件つけたまでは良いものの、不器用極りのかすがが長い長いマフラー(あわよくば恋人巻きをしたかったそうだ)を編み終えたのはクリスマスから一週間経った時だったのだ。
今更渡せるかと喚くかすがと、あまりにも出来の悪いマフラー。双方を見て俺が出した「お願い」

「本当は隣にいたのは謙信様だったのに…」
「あったかいねぇ。毛糸は高いの買ったからちくちくしないし」
「……」


どんなに話しかけてもかすがは無視を決め込んだようで、ぷいと顔を背けたままじっとしている。
近距離に見えるこちらに向けてある白い項。雪みたいだなぁと思って触れてみた。

「ひゃうっ!?」
「あ、ごめん」

それは思ったよりも暖かくて、冷たいのは俺の手のほうだった。

「男の癖に冷え性とかウケるよねぇ」

軽く笑ってやると、これでもかとかすがが殺戮の視線で睨んできたので背筋が凍った。


「暖房付けるぞ」

どんな恨み言を言われるかと構えていたのにそれは意外な言葉だった。
かすがは一人では立ち上がれないため、ほら立てと催促してくる。

「え、いいよ勿体ない!マフラーしてんだし、あったかいよ」
「お前は寒いだろう?手は冷たいし、妙に硬直しているし」


妙に硬直してんのは緊張しているからなのだが。
だって、こんなに近距離にかすががいるんだぜ?


「心配してくれてんの?」
「ばっ…!」

顔を赤くして否定の言葉を出そうとしたのだろう。
だけれど続く言葉を捜すうちに吹っ切れたようで、かすがはやけになった表情で言い張った。


「そうだ悪いか!」
「え、マジ」
「ふん」

これはちょっと感動物で、少し乱れたマフラーを巻き直すかすがをじっと見つめる。
軽く色付いた薔薇色の頬に釘付け。
その視線に気がついたかすががこちらを見て、少し考えた挙句、左手を突き出してきた。

「手。だせ」
「?」

言われたとおり差し出すと、白くて本当、誰にも犯されたことの無い雪の絨毯みたいに綺麗で白い、でも暖かなかすがの手が吸い付くように俺の手を包んで、ぎゅうと握ってくれた。



「かすが」
「暖かいだろう」

ボンッと音を立てて俺は赤面した。
やけくその後の素直なかすがはあまりにも男前で、困る。

本当   

「めちゃくちゃ…」
「このマフラーはお前にやる。私には必要ないしな」

堪えきれない想いを我慢するためにも、今日の幸運を噛み締めるようにマフラーを締めた。
ぐぇっと喉を軽く圧迫されたかすがは嘔吐いた。

「苦しいっぃ!!」
「へへっ。これでもっとあったかいしかすがは逃げられない」
「ふざけるな!」
「寒いんだから暖めてよぉ」
「気持ち悪い喋り方するな!!」



心も身体もほっかほかで、あまりに愛おしい熱に泣きたくなる。





リク:「佐かすで甘い話」

かすががデレただけで甘いかどうかは分かりませんが、久々に佐助に良い目に合ってもらいました。

マフラーを二人で巻くことを恋人巻きって言うんですかねぇ?定かでないのに使ってしまった(惨死

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