贈り物
□幸せの色
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今日のかすがは妙に機嫌が良い。どうしたの?と小唄交じりで弁当を食べているかすがに佐助が聞いた。
すると嬉しそうに頬を染めてひらりと一枚の紙を見せた。
「いつきと蘭丸から貰った」
にへらと笑う姿は本当に幸せそう。
紙には色とりどりのクレヨンでお花や蝶々に囲まれたふたりのかすがの絵が描いてあった。小学生の描いた絵なので上手とはいえないが可愛い。赤いクレヨンでかすがねぇちゃんだいすきと描いてある。
「昨日二人と遊んだんだ。その御礼だって」
いいだろうと見せびらかすかすがに政宗がああと言った。
「確か昨日いつきが小十郎になんか聞いていたな」
「そうなんだよ。片倉が心をこめて絵を描けばいいって教えてくれたそうだ」
「へーよかったねぇ」
幸せだとぎゅっと絵を抱く。
(なんかちょっとずるい)
皆、同じ気分でかすがを見ていた。
ふと、慶次が思い付いたのか鞄をあさる。取り出したのはルーズリーフと筆箱。
「ちょっと待ってねー」
そう言うとスラスラと何かを描き始めた。夢吉がその隣で消しゴムを弄って遊んでいる。
「出来たよー見て見て」
ジャーンと見せたのはにっこり微笑んでいるかすがの似顔絵。シャーペンだけで描かれているのだがとても上手。
おーと皆の歓声が上がる。
「慶次、絵上手なんだ」
「これぞ代々前田家に伝わる芸術的錬金・・・じゃないや、似顔絵法ってね」
「すごいな。前田」
「ハイ。かすがちゃんにあげる」
「わぁ。ありがとう!」
受け取って絵に見入るかすが。私はこんなに美人じゃないぞと照れたように言うが満更でもなさそうだ。
「慶次殿ばかりずるいでござる!某も描く!」
「俺様も!」
「我も」
慶次の鞄から勝手にルーズリーフを取り出し思うままに描いていく。止めろよ!と慶次は止めるが先を越された事が悔しい野郎共のささやかな嫌がらせであった。
「どう?かすがちゃん。上手く描けたっしょ?」
佐助がかすがに絵を見せる。かすがはその絵を見るとすぐに表情変えて佐助を殴った。
「いってぇ!!」
「死ね!」
そこにはかすがが可愛らしく描かれていた。が、かすがの逆鱗に触れたのは絵でなくその隣に大きく描かれた吹き出しの中の言葉。
「なにが佐助大好き(ハート)だ!キモイぞ変態!!」
「ひでぇ!」
くしゃくしゃとかすがは佐助の描いた絵を丸めてポイと投げた。
「真田下手糞だな」
「ち、長曽我部殿には言われたくないでござる!」
幸村の絵はいつきや蘭丸と同じレベルの物。長曽我部は目が大きくてまるで少女マンガの絵のようだ。
「ネタにして笑えるのはちょかべの方だね」
「ぷぷぷ」
「ちょかべ言うな!そして毛利お前笑い方むかつく!てめぇの場合はわざとだろ!!」
「我も描けたぞ」
元親のツッコミを無視して元就がかすがに絵を渡す。
「うまいな」
「そうだろう」
「長曽我部と伊達が」
「何!?」
紙には可愛らしく描かれたかすがと眼帯二つ。それぞれだてとちくびとかいてあった。
それを見て佐助と慶次は笑い転げ幸村は首を傾げる。長曽我部と伊達は何でだ!と叫んだ。
「眼帯のほうが本体だろ」
「NO!」
「ふざけんな!しかも俺は乳首じゃねぇぇぇ!!」
「照れるな」
「黙れ!」
「いいぞやれやれー」
「親ちゃん負けてるよね」
「うるせぇ前田!!」
いつも言い争いが始まったので、佐助はまだ出来ていない政宗の絵を見るため近づく。
「政宗は何を・・・って、うっほ、何それ」
「かすがの想像上のnude」
良い子も悪い子にも見せられないモザイクや自主規制音ばかりが入るような絵だった。
かすがはすぐにそばにあった政宗の筆箱を手に取る。COOLにデコってある(政宗談)缶の筆箱は殴ればものすごく痛い。
「死ねぇぇぇぇぇ!!」
「ちょ、待て!缶の筆箱はかなり痛いん」
政宗の悲鳴が響く。
旦那は見ちゃダメだよと佐助が幸村の目を塞ぐ。かすがが政宗を殴っている間に小太郎がこっそりその絵を黒く塗りつぶした。
しばらくして
「ふぅ。なんか一暴れした気分」
「いや実際したじゃねぇか」
軽く汗掻いたかすがが帰ってきた。振り向けばメッコメコにされた政宗だったものがあるのだが皆あえて見ない。
かすがが暴れているうちに数枚の白いルーズリーフはほとんど落書きで埋まっていた。
慶次の描いた夢吉や佐助の描いた明智など沢山の絵が描いてある。
「どれが一番上手?」
「某のかすが殿が一番美人!」
「いや、俺だろ」
「我だ」
「俺様じゃん?」
「・・・・」
「俺でしょ」
皆が口々に言う。かすがは恥ずかしくてそれを紛らわすためか夢吉を弄っていた。
キーンコーンと予鈴が鳴る。
「さて、そろそろ教室戻ろう。次、お館様の授業だ」
「猿飛せんせー。あの政宗はどうします?」
「放置しときましょうねー」
「はーい」
「・・・・・」
ぞろぞろと自分の道具を持って歩いていく。かすがも皆の後を追いかけようとして立ち上がった。
「そういえば誰が一番上手いとかなんとかはいいのか?」
「あーいいよ。別に」
「そうでござるね」
「?」
「だってかすがちゃんが喜ぶ顔見たくて描いたんだもん」
「えっ」
「なんだ。嬉しくなかったか?」
皆の言葉にかすがは顔を真っ赤にする。照れて、言葉が上手く出なかった。
「てか、いつきちゃん達の絵をあんまり嬉しそうに見るもんだから小学生相手に嫉妬しちゃった」
「ば、馬鹿じゃないか!」
「・・・・・」
「某たちは皆、かすが殿が大好きでござるから!」
「な・・・!?」
「あんれー顔真っ赤」
いひひと笑う佐助を照れ隠しで殴る。そして早く行け!と言うと皆、ぞろぞろと屋上の出口へ消えていった。
真っ赤になった顔と早い動悸を収めるためにかすがが両手で頬を包む。
あーあー落ち着けー落ち着けーと独り言を言っていると足元にある紙に気づいた。
「あれ・・・?」
置き去りにされた数枚のルーズリーフ。そばにある丸められた佐助の描いた絵と一緒に拾う。
慶次が描いた絵は流石に美人に描きすぎて照れてしまう。佐助や元就の絵は可愛らしい。元親や幸村、そして端っこに描いてある小太郎の絵は上手ではないが子供たちの絵のように愛情が伝わってくる。まぁ、政宗のは論外にしたいところだが黒く塗りつぶされていない顔は上手いと思う。
どの絵も描かれたかすがは笑っていた。
「私、あまり笑っているつもりは無いのにな」
するとかすがの顔は自然と綻んだ。先ほどのようにぎゅっと抱きしめてみる。
幸せだな、と心の底から思った。
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終
キリ番6666リクエストで「学園BASARAでかすが総受け」を頂きました。遅くなってすいません!
なんか慌しい感じの文章になってしまった・・・・。
慶次は絵とか美術とか上手そうなイメージが。で、出番なかったけど竹中は下手そう。
そして相変わらず政宗さんの扱いがひどいな。
ちなみにかすがは真田の「みんなかすが殿が好き」を恋愛感情じゃなくて友人として好きと取っています。
鈍感いえーい。
リクエストありがとうございました!すごくありがたいし嬉しいです!これからもよろしくお願いいたします。