妖蔵小説
□INTOXICATION2
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ガラリ、と窓を開けると、ちょうどまあるい月が見上げるほど高く浮かび上がっていた。
やわらかな明るい光がくっきりと視界に飛び込んでくる。
妖狐は思わず声を上げた。
「キレーな月だなぁ」
「ああ、十五夜だからな」
「じゅうごや?」
「一年で一番月がよく見える日だよ。人間界では団子を食べたり、酒を飲んだりしながら月を愛でるんだ」
「酒かっ♪」
確か黄泉がお中元に送りつけてきた一升瓶があったはずだ。
キラキラと目を輝かせる妖狐にわざと呆れたような笑みを浮かべて、
「じゃあ、持って来い」
こんな月の夜くらい、心穏やかに過ごしたい。
盃を取りに行くために蔵馬は立ち上がった。