医療問題(川口)

□バコロド医療問題
1ページ/1ページ

バコロドのバラン街での医療問題
〜KUBOの取り組み〜


 バコロドでのエクスポージャでは、Kawayanaという村に行き、KUBO(Kawayanan Uswag sa Pag-Bag-O)という女性組合と行動した。KUBOは創設してまだ1年足らずであり、スタッフは7名、参加者の数は17世帯である。KUBOの活動は、主にミーティングを開き、Kawayanaの町の女性たちに、植物から薬を作る方法や、生活向上のための知識、ワークショップなどを行っている。創設1年目は、特に町の人々の健康状況の改善に力を入れて取り組んでいる。その背景には、Kawayanaの町には、病院もクリニックもなく、自分たちである程度の病気の治療を行うことが強いられていた。この様な問題を、5段階の構造を用いて考えてみたい。
 

T暴力

1  直接的暴力
町に病院・クリニックがないために、自分が行きたい時に、病院に行くという選択が困難ということである。充分な治療が受けられないということは、精神的不安、社会的疎外感を与えると考える。

 2 構造的暴力
 貧困であるということである。国の資金運用が町の医療問題にまで手が回らないという資金不足、つまり医療格差である。また町の人々が、お金がないために病院に対して医療費が高く身近な存在ではないということもあげられる。そのため、医療費にお金をかけることが出来ない人々が、沢山いる貧困地域に病院をたてるよりも、都市や海外などで多くのお金を稼ぐことが出来る場所に、医者や看護婦が集中している現状が今日のフィリピンに存在する。


U自力更生

 様々な知識を高めることが重要であると考える。KUBOのような団体の開いているミーティングに参加して、自分で作ることのできるハーバル・メディシンの作り方や薬の専門的な知識を高め、近所での仲間を増やして様々な情報交換して様々な知識を得ることは、医療機関のないこの町の人々にとって、自力更生するためにとても大きな役割を果たしていた。さらに、教育の重要さを改めて学び考え、自分の子供たちを学校に通わせることによって、子供たちが学校で学んだことを通じて自分たちの知識も高めることができ、学校教育から健康の重要さや医療機関への関心も深まると考える。充分な知識が身に付いた上で、クリニックや病院の重要性を訴え、町の病院設立の活動を行うことが最終的な自力更生につながると考える。


V阻害要因

 貧困であることが大きな影響を与えると考える。第一にフィリピン政府の資金不足があげられる。病院やクリニックを設立したくても、国からの支援がないことには建設費や運営費や設備費などの問題が生じる。政府からの資金不足によって、小さな町にまで目の行き届かない現状を奪回しないことには、自力更生は成立しないと考える。第二では、フィリピン国内から海外への出稼ぎ労働者の増加があげられる。フィリピン国内での労働賃金よりも海外での労働賃金の方が、より多くのお金を稼ぐことができるため、現在のフィリピンでは海外労働を目的として専門知識を学ぶ人々が多く存在している。看護師や医師もその一つである。また、フィリピン政府は、海外への出稼ぎ労働を、政府政策の一つとして推し進めている。その背景には、一人の海外への出稼ぎによって、その家族の人々はもちろん、その親戚の多くにも、お金が行きわたるため、多くの人々の生活を豊かにすることが可能になっているという現状がある。国内での収入には、やはり限りがあり、海外での労働力の需要により、フィリピン人のニーズが高まっている。日本でも、医療不足による改善策としてフィリピンの人々の医療現場への導入が始まるなど、フィリピンの医療に携わる人々の需要が高まっている。最後に、医学部に通うことためには多額の授業料や設備費がかかるため、経済的に生活が苦しい家庭では、どんなに子供の能力が高く、医学部へ通いたくても通えない子供たちが沢山いる。そのため、医学部へ通うことのできる人は限られ、経済的余裕のある裕福な家庭の子供にしか、医師になるという選択ができないという現状があげられる。経済的な生活苦難の人々は、自由な選択ができないという格差や、フィリピン国内における都市外の医療不足の問題に対して貴重な意見を持つ貧困層出身からの医師がとても少ないということは、都市外の地域医療問題の改善に向けて大きな痛手になると考える。そのためにも、貧困層出身の医師なしでは、地域医療問題の改善は困難であると考える。


W連結

 連結は非常に重要である。なぜなら、政府の資金不足のために地域の医療不足問題にまで手が行きとどかず、この問題を見落としてしまうからである。そのため、地域ネットで政府や社会に訴えかけ、誰でも充実した医療機関を受けることができるように活動していくことがとても大きな役割を果たすと考える。KUBOは2007年1月に設立され、1年という新しい地域組合である。スタッフは7名であり、現在17世帯の人々が参加している。設立して1年間の間は、町の人々の健康問題に対する取り組みを最優先課題として行っている。KUBOでは、薬が高くて買えない人々のために安いコスト作れるハーバル・メディシンをメンバーに無料で提供している。また、ハーバル・メディシンの知識を教えたり、時々KUBOのセンターをクリニックにして、町の人々の健康状態を検診している。このような活動の運営を支えているのは、参加者の入会金の10ペソと、CAJDEN(Christian Advance Justice for Development for Negros)という17名の団体の支援である。この団体は無料でKUBOにハーバル・メディシンのトレーニングを行っている。このような連結によって、専門的な知識を知ることで、この町の人々は町の医療不足という問題を乗り切っているのである。また、KUBOの最終的な目標として、この町にクリニックを設立することが掲げられており、様々なアプローチにより、この目標達成に向けて日々取り組みを行っている。


X関連

 このような地域格差による医療不足問題があるということを知り、そしてその問題に直面している人や支援団体の人の話を実際に聞くこと、そしてその問題の背景を考え、更なる理解を深めることがあげられる。そこから、様々な人々にその現状を伝え、問題克服に向けて自分ができることを探し、支援団体での活動に実際に参加してみることも重要な役割を果たすと考える。
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ