女性問題(川口) エスニックマイノリティ(原田)

□エスニックマイノリティ
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 ドゥマゲテのエスニック・マイノリティ




 私たちはドゥマゲテ市に移り住んだ少数民族、バジャオ、アタ、ムスリムコミュニティの人々にインタビューをした。
 バジャオ民族はミンダナオ島で魚をとりながら海の周辺で生活していた人々である。ドゥマゲテ市の町では、彼らは物乞いのためにしゃがみ込み、大きな貧困を抱えている。彼らは学校にも行けず仕事もない。
 アタ民族はネグロスオリエンタルのマビナイの山で生活している人々である。私が町でインタビューした女性は、彼女の家は農家だが、貧困と学校が遠すぎるせいで子供を学校へ行かせることはできない。
 三番目にインタビューしたのはムスリムの商店街の商人である。彼の問題は家族の健康である。彼はそこでムスリムの人々とほかの多数の人との経済格差はそれほど感じていないと話していた。


 5段階分析


 直接的暴力の一つは特定の人から受ける差別である。
 もうひとつは紛争によって家族や親族を失うことである。バジャオ民族の中にはミンダナオの紛争を逃れるためにネグロス島の都市へ移ってきた人も多い。また、ネグロス島の内部の奥地の山でも紛争が多い。そのため少数民族の人々の中にはそれらから逃げるために都市へやってきた人がいるのである。
 
 彼らにはたくさんの構造的暴力が存在する。ひとつは歴史的要因である。彼らの貧困はスペイン植民地時代から関係している。
 二つ目は貧困そのものである。
 三つ目は学校から家までの距離が遠すぎることである。そのため学校に通うのが難しい。
 四番目に彼らは経済システムの外側にいて現金を得るのが難しい。経済基盤がないことに加え、地理的な原因がある。
 五番目に宗教の違いが挙げられる。これはそれ自体では問題のないことだが、問題なのは片方の宗教が多数で、もう一方が少数ということだ。私がインタビューした人々は、政府やNGOは絶対数の多い一般的な貧困の人々に注目し支援しようとする、という。
そのため、少数者に位置する人は支援をもらえる可能性が減らされている。
 六番目に教育だ。字の書けない人が多い。 七番目に町へ来る理由の一つが紛争であるということだ。
 最後の一つには彼ら自身が劣っているという意識が内面化していることや、ほかの多数者が彼らに対してそうした固定観念を持っている、ということがあげられる。
 

 次に自力更生についてだが、彼らの自力更生はかなり限られている。なぜなら彼らはいくつかの理由のために都市に移り住んだため、新しい場所では地域基盤がない。しかし彼らは貧困を乗り越えるために都市に移ってきたため、来ること自体が自力更生の一つである。
 また彼らは仕事がないが、自分たちの食べるための魚をとって暮らしておりこれも自力更生の一つである。物乞いをすることは自力更生ではないようだが、彼らには支援は行き届かず、教育も仕事もない。何かを始めるための基盤もないため、物乞いは彼らにとっては自力更生の一つと言えるのではないだろうか。
 

 第三に、阻害要因はNGOや政府からの彼らに対する援助がほとんどないということだ。
政府やNGOは大多数の一般的な貧困者、つまり農業労働者などへの支援を重視しているため、貧困の中にいる少数者には支援をしようとしない。それに加え、バジャオ民族の女性は警察に捕まるのが恐いと話していた。警察に彼らが捕まれば、もとにいた場所に送られてしまうことになる。これも阻害要因の一つである。また、フィリピン社会に対しての圧力がある。ラモス政権時代ミンダナオ島の独立についての法律がフィリピン政府とムスリム側で話し合った結果可決された。しかし国家分裂に賛成できないフィリピン社会の圧力のために、それは現実のものとはなっていない。そのため新しいタイプの紛争が近年増えており、それに関係してバジャオ民族の移住も近年増加したことがうかがえる。
 

 第四に、連帯だが、以上のようにNGOや政府との連帯はほとんどない。しかし私がインタビューした女性は一人の住民によって助けられていた。その人は小学校の先生で、いつも海辺で彼女たちのことを見ていたのをきっかけに、自分の家の前の小さな小屋を住まいとして彼女たちに提供していた。そのため、地域住民と当事者との連帯が重要である。
 

 最後に、私たちと当事者たちとの関与として、貧困層の人々の中の最も貧困を抱えている人々はどんな援助も受けるとこができていないことをNGOやODAに知らせることが大切である。そして私たちはNGOやODAの援助の仕方や資金の使われ方を問い直さなければいけない。
 

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