Novel
□だからそうだと言ったのに
1ページ/5ページ
いつだって
好きなんだよ?
だからそうだと言ったのに
まさかこうなるなんて思ってもみなかった。
潤む瞳。紅く染まった頬。漏れる吐息。
チョコレートボンボンを食べさせただけでこうなるなんて。
それは遡ること一時間前。日吉はなぜか高そうなチョコレートを持っていた。
「何それー、跡部の?」
「あ、いや…これは女子から…」
申し訳なさそうに言う姿に、気を遣っているのだと感じた。
確かにちょっぴり憤りを感じたけど、ここは年上の余裕ってやつを見せなきゃね。日吉、可愛いし。
「へ〜そうなんだ!おいCそうだね〜」
「……食べます?」
「日吉が貰ったんだから、ちゃんと食べてあげなきゃその子が可哀相だよ。ほら、あーん。」
適当にひとつ取って日吉に食べさせてあげた。
日吉は少し躊躇いながらもそれを食べてくれた。
「おいC〜?」
「まぁまぁ、です。アンタ、チョコ好きですよね?」
「うん、好き〜」
「じゃあ、どうぞ。」
チョコを差し出されて今度は俺がたじろいだ。
「俺、甘いのは苦手だから、芥川さんに食べてもらったほうが嬉しいです。」
日吉にそう言われると、やっぱり食べるしかないだろう。
チョコは、とろけるような甘さが、口の中に広がり……ってなんだかこれおかしな味がする。
そうか、これ高い奴だからチョコにお酒が入ってるのか。
「日吉、これお酒入り…って日吉?」
ためしに俺も日吉と同じ種類のチョコを食べてみたけど、俺が食べたやつとは、かなりお酒の量が違うみたいだ。
日吉は酔っていると思う。