Novel

□あなたに逢いたくて
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思い出すだけで
とまらない。

あなたに逢いたくて

 跡部が忍足から離れたのは、氷帝学園高等部を卒業して、大学に進学したときだった。
 ほぼ喧嘩別れとなった忍足との関係は、周りも、跡部すらも分からなかった。
 和解をするにも、跡部が行っている大学は、アメリカにある有名な大学。忍足が行くには遠すぎるし、跡部が日本に戻るには暇がなさすぎる。
 そういうわけで、二人は喧嘩をして、ほぼ別れた状態のまま、離れ離れになってしまった。
 そして、6ヶ月の歳月が過ぎていった。

「そういえば、忍足〜跡部とメールしてる?」
「・・・・よぉ分からん。」

 日本では、丁度昼時。たまたまあったジローと忍足は、二人で日がな一日を過ごすことにしていた。
 うやむやにして返事をした忍足に、ジローはつまらなそうな顔で、相槌を打った。
 
「跡部に会わないの?」
「・・・跡部は・・もう知らへん。アイツの話はせぇへんでもらえるか?」

 ジローの質問に、忍足は怒りも、喜びもせず、あきれてそういった。
 もう忍足は跡部に逢えるかあえないかなんて、知っている。

「(だけど、俺は・・。)」

 忍足とジローは、夕方になるころには、場所を変えて、居酒屋に入っていた。
 双方とも、酒に強い。だから、飲む量を制限せずに飲みまくった。
 ボトルが4つ、たまるころには、流石の忍足も顔を赤く染めていた。

「ジロー・・お前は、酒に強すぎや。」
「まぁね〜中坊のころから飲んでたから。・・っと、俺そろそろ行くわ。」

 時計を見て、席を立ち上がったジローに忍足は、まだ飲もうと腕を掴んで引き止めた。
 すると、ジローはしばらく考えていたが、返事は変わらず駄目であった。

「ええー・・俺一人で飲むんつらいわー。」
「ワリーな、また飲もうぜ。若が待ってるんだよ。」

 飲んだ分の半分を席に置くと、ジローは一足先に出て行った。
 忍足は、しばらくジローが帰るところを見送ったが、ジローが完全に見えなくなると、思わずため息が漏れた。
 それは、羨ましさと少しの嫉妬。
 忍足はそのうやむやな気持ちを、ビールを一気飲みしてごまかした。

 忍足は酔っ払ったまま、家に帰り、そのままソファーに倒れこんだ。
 
「(まだ・・引きづっておるし・・)」

 他人事のように心の中で呟くと、忍足の視線はいつのまにか、ある写真に向けられた。
 それは、跡部がまだ日本にいるときに撮った一枚の写真。
 別れたまま、忍足は未練が残りっぱなしで、毎日を過ごしていた。

「なっさけな・・・俺ってこんなに女々しいんやな・・」
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