独立への戦火

□第一章
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2008/6/9 9:58 シュラウド基地司令室

「ケン・レイティス小尉!!ただいま着任いたしました!!」
目の前に座る基地司令と彼の右に立つ副司令に向かい、ケンは姿勢を正し左手に帽子を抱え右手で敬礼して、元気な声で挨拶をした。
「ご苦労。楽にしてくれたまえ」
基地司令のウィル・ハ―ブスウェルは淡々とした口調だ。“休め”の指示が出たがケンは“気をつけ”の姿勢だった。無理もない、新人だ…と言えばそれまでだが、相手が目上で階級や経験値も上であるが故に恐縮していた。
「しかし珍しいな。君のようなエリ―ト候補が最前線に志願するとは。士官学校も主席で卒業したそうじゃないか」
ウィル司令が書類を目にして語りだした。
「しかも、君のお父上は国防省長官――」
「父は関係ありません!!」
ウィル司令が言い終わる内にケンが遮った。
「自分は敵を倒すために自分の意思で志願したんです」
ケンは熱い眼差しで志願理由を言った。
「……なるほど」
少し間を置きウィル司令が納得した。その間、指令の傍らに立つ副司令のリュウ・ジョンソンは大きく口を開け驚いたまま固まっていた。
2008/6/9 10:36 シュラウド基地構内

鉄パイプを担ぐ者。パイプを設置する者。一輪車をひく者。トラックから荷物の搬出をする者。ハンガーの屋根を修理する者……言い出したらキリがない程、シュラウド基地構内は働く人間が大勢居た。その構内の脇道を歩くケンは呟いた。
「みんなスターチアのために頑張ってるなあ……」
ケンの正面には、タバコを吹かし談笑している男性がいた…が、手を休めず作業に集中していたため、『頑張っている』というオ―ラや感性が伝わってきた。皆、ヴェルからの独立解放に向けて必死な姿勢をしていた……
(皆……?)
ふと疑問が浮かぶケン。いや、ここへ来て一番にそうでない人物と接触した。
「そうだ!あの外国人の緊張感の無さは何なんだ?」
先程出会った外国人を思い出したケンは、頬に血管が浮いた。頭の中で、商品と棒アイスを持ち「あっはっはっ…!」と上機嫌に走り去る外国人がフラッシュバックする。ケンは、ふうっと息を吐いて呟いた。
あの人の爪のアカでも飲ませた方がいいんじゃないか?」
同じ頃――
「大丈夫なんですか?ケン小尉をあの男の小隊に入れてしまって…」
司令室ではリュウ副司令が頭に右拳を当て不安な表情で悩んでいた。
「国防長官の息子ですよ、もし万が一の事があったら……うおぅ……」
リュウ副司令の不安な呟きにウィル司令が答える。
「君が心配しなくていい。責任は私がとる。それに――」
司令はパイプをくわえ窓に映る風景を見渡している。
あの男のところだから大丈夫なのだよ」
淡々とした司令は薄く微笑したようだ。

シュラウド基地構内の男性寮――
その外見は他の施設と何ら変わりない建物だった。203号室。ケンは玄関の前で足を止め、深く深呼吸をした。
(何事にも最初の第一印象が大事だ!!)と、頭に言い聞かせ行動に移した。
ガチャ。
「失礼します!!今度、同室させていただくことになった…」
言葉を遮ったケンは部屋の様子に気づいた。部屋はワンルームで窓が二つ、ベランダ無し。窓と窓の間に小さな机。その両隣にベッドがあり、事務机と腰掛けがあった。
「いない…のか」
ふぅっと息を吐き、ケンは改めて部屋を見渡した。
思わず目が止まったのは一台のベッドだった。そのベッドにはケンの他の使用者が使っているものらしき少し疑っちゃうモノ。
(これって…!?)
普通の人ならこんな物は持ち込まない。…いや、買いもしないだろう。そこに置かれていたモノとは……サッカーボール、野球ボール(軟式)、木製でテープの巻かれたバット、ひげ眼鏡、いたずら用のハンド、脱ぎ散らかした靴下、イベントショーでよく見られるネコやブタの顔を全て被るマスク、etc…が、ごろんと置かれている。
「…おもちゃばっかりだ。…この部屋の人もあまり緊張感ないみたいだな」
呆れて感想を漏らしたケンは、クローゼットに向かった。
「会ったら、一度ぴしっと言ってやらないとな」
そう呟き、ケンはクローゼットを開けた。
「ー――――!!」
…変な奴がいた。その変な奴は、眉を吊り上げ、目を点にして見開き、鼻の穴と口をでかくして驚いて硬直していた。
「わああああ!!」
「おわああああ!!」
両者、驚きの叫び声を出した。
「あ?」
先に気づいたのは変な奴の方だった。


訂正、


よく見れば、先程の緊張感の無い外国人だ。
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