北天のアンドロメダ

□プロローグ
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メルトレミン大陸圏南部の大国―――
第二次世界大戦の波に乗り、民主政権と軍事政権が衝突した。点々と各地で起こる紛争を悪化させ、核兵器の保有により大国は北と南に分断される結末。二分した大国では、冷戦時代の米ソのような緊張感がしかれ、恐り・憎しみ・悲しみ・妬みといった負の感情が両政権を支配していった。20世紀後半からはコンピュータ技術の発達により、軍事力が増し警備網がより強化された。冷戦から5年後、停戦に致るが翌年、北の軍事政権派が停戦協定を無視。核兵器こそ使わなかったが、大量破壊兵器を用いて一国の首都進行。だが待ち受けていた民主政権派は、それをも凌ぐ超破壊兵器で迎撃し、内戦に終止符を打つことができた。その後、軍事政権派の討伐隊を結成させ、探索が掴めず現在に至る。


時に西暦2014年――
その大国が突如、諸外国に牙を剥いた。大量破壊兵器および超破壊兵器を持って近隣諸外国を占領していく様は、当時、国王・貴族院を退けた北インジュニア圏ヴェル軍事帝国のような存在だ。大陸を震撼させた過去が又、現在へと降りかかってきたのだった。



2014/4/1 9:57am

ハルトナッツ王国シルト宮殿の庭。草原を思わせる広大な庭に赤いジュウタンが敷かれ、その上を歩いているのは1組の若い男女だった。カップルは白で統一され、男は上からフリル付きのYシャツにタキシード、そしてスラックス・革靴。
白ではないが赤蝶ネクタイ。女はヴェール・ウェディングドレス・ハイヒールの3点セット。その後ろで2人の男女の幼子がドレスの裾を軽く掴んでいた。
「今、ハルトナッツ王国第1王子エリック様とメナミア公国第1王妃リリシャ様が入場して参りました。晴れやかで誠にめでたい思いです。式も順調に……」
と、TVの中でメナミアのリポーターが陽気に祝福の賛辞を世界中に報告している。そして――

エール・イクシオン・アルバトロス(AIA)居住区画、食堂。
「…ったく、いい気なもんだぜ。つい先日まで両国外務省が、軍がどうたらこうたら討論してたんじゃなかったっけ!?その討論、10日も掛かってさぁ」
食堂内に設置されたTVでニュースをみていたリーダー格風の男が皮肉気に毒づいた。事実、両国の政治家は軍備に少し口うるさい。いわゆる犬猿の仲だ。それが何故に結婚式をあげるのか、男は疑問に思ったのだろう。しかし、男の隣でニュースを見ていた小柄の女が的確な突っ込みを入れる。
「中尉、それは10ヶ月も前の話ですよぉ!お気持ちは分かりますが、彼女と別れたからって今更そんな毒づかなくても…」
と言い終わるか早いか今度はテ―ブルの上に両手を組み、右頬を伏せて寝ていたはずの日本人が答えた。
「小尉、こいつはバカだからそれ位で勘弁してやれ」
「セイヤお前に言われたかねえぞ!!」
寝ていたはずの日本人にリーダー格風の男が顔を赤らめガタッと立ち上がり、怒りと突っ込みを入れた。……コントかよ。
セイヤと呼ばれた青年、本名は“山咲星夜(やまさき せいや)”、階級は中尉。その性格は至って温厚…だが、普段はおちゃらけてバカばっかりしている。例えば、PX(売店)のお菓子をただで持ち帰る事(万引き)30件!
その罰として食堂の皿洗いで皿を割る事150件にも及ぶ!!AIAのエースパイロットという肩書きが無ければ、ただのアホだ。リ―ダ―格風の男はそれが言いたいのだろう。
「それからレイラ、俺の傷口に塩を塗るような言い方はやめろ!」
と、小柄な女こと“レイラ・サマリク”小尉に注意を促した。
「はぁい…でもジェフ中尉も気を付けて下さいよ。結構妬ましそうでしたので」
「ほっとけ」
と、ジェフ中尉…本名“ジェフ・セイカ―”中尉が逆に忠告を受け、プイッと右にそっぽを向いた。その間セイヤはTVに視線を向け、(夫婦漫才かよ)と頭の中で突っ込んだ。ふとセイヤはTV画面右上でキラッと光るものを見た気がした。
「ん?」
と呟き、上体を起こして画面右上をまじまじと見つめた。真剣な瞳で画面を見つめるセイヤにレイラは訊いてみた。
「どうかしたんですか?」
「いや…画面右上で何か光るものを見て…」
「気のせいじゃないですかぁ?何もありませんよ」
「……」
「きっと光の反射がカメラに映ったんですよ」
「だと…良いけどね」
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