ラフ漫画

□もう少しだけ…。
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ちらちらと無邪気な雪が舞い散る夜。
  

刀を抱いても眠れない日は、何故かあの日の事を思い出す。

“幸”と“悲”、二つの対照的な記憶―。


           



 あれからもう、三度目の冬を迎えようとしている。   
     
    あの時の君と同じ“十八歳”―…。    


         夢と現(うつつ)の狭間―。

             
           


 目を閉じれば、梅の香匂う中で微笑む君。

     
      その愛しい笑顔を守りたくて―  



           


  “このままずっと二人で…”ささやかな淡い夢を抱いてしまったんだ。       


           


   だって、君があまりにも幸せそうに微笑ってくれるから。

         



  でも、舞い散る雪が全てを切り裂く。


      場面はあの日に変わる。


      残酷なまでに鮮明な記憶…。


           


    最も辛く、最も残酷な場面。   


 君をこの手にかけ、噴出す鮮血が目の中に飛び込んで来る。  

           


    俺なんかに微笑まないでくれ…! 


          どうして…?


      どうして俺が君を殺さなければならない…?

      何故君が死ななければならない…?

     
   本当に死ぬべきは、数多の命を殺めた俺なのに…!!   

         どうして…!!
    

       


 誰か、一番大切な女性(ひと)までもこの手にかけてしまたった罪深き俺を裁いて下さい…      


            


 記憶の中の君は、いつも微笑んでくれるけれど。


     どんなに手を伸ばしても、届かない。

     
        ただ遠のいて行くだけ。

  
            


    残り香を追っても、君はすり抜けて行く。


       許しを請うつもりは無いけど。


  これが君なりの俺に対する“罰”なのだろうか。  
 
            


  ―苦しいでしょう?辛いでしょう?でも、どんなに手を伸ばしても、あなたは私に触れられない。

 だってあなたは逃げようとしているもの。


        “何に…?”

    
 ―“生きる事”に。あなたは心のどこかでいつも、罪の意識に苛まれている。生きていても抜け殻。

 だから、私に触れる事は出来ない。


      “でも、俺は―…”


           


        
   ―…生きて。
どんなに苦しくても、どんなに辛くても、“生きる事”から逃げないで。それがあなたに科せられた使命なのだから…。     

           


       そうだ…そうだな。

   いい加減もう、覚悟を決めなければならない。


           


         ごめん、巴。

      
       俺が情けなかった。


 逝った後まで、君の言葉に救われて、心配かけてばかりだな。

           

        
  こんな事思うのはおこがましいかもしれないけれど。


   君に逢えて良かった、と心からそう思うよ。
  

 人を愛する事の意味を、幸せを教えてくれたのは、君だ―。 

        
 “答え”が見つかるまではまだ時間がかかるかもしれない。 


でも、自分に科せられた“使命”は必ず果たすから。
 
         だから、

     
     もう少しだけ、許して欲しい―…。
 

           


〜あとがき〜
今回は超シリアスで…笑
巴を失って未だ…という感じです。
お付き合い頂きありがとうございました!

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