短編

□大好きクッキー
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大好きクッキー・1

 アベルはソファに座ったまま、テーブルのクッキーに長い腕を伸ばす。だが、あと少しという所で指に挟む事が敵わずにいた。
「あと少しなんですがね〜」
「卿は何をしている?」
「いえ、お腹が空いたのであのクッキーをいただこうかと思ってこう...はぅぅ、あとちょ〜っとなんですけれどね」

こういう行為をズボラというのだろうか?
なんと無意味で非生産的な行為であろう...

 手を必死に伸ばし愚痴を吐き続ける行為と、そのまま立ち上がりクッキーの元へ向かう運動量の差を0.02秒で見切り、更に時間的ロス及び取り損ねた場合の損害額までもを顧慮して、機械化歩兵・トレス=イクス神父はアベル=ナイトロード神父の、無駄だらけの行動に終止符を打つべくクッキーの皿を持ち上げた・・・まさにその瞬間

「トレスくんってば酷いっ!こんなにお腹を空かせている哀れで不幸な神父から、クッキーを取り上げるだなんて」
「卿は勘ち」
「あぁ神様、トレスくんが私のささやかな幸せをブン取っていきましたが、ちょこっと魔が差しただけなんですぅ、どうか彼をお許しになり大いなる祝福をお与えください。それからこんなに寛大なわたくしにも、それに見合うお思し召しと・・・何かお腹の足しになる物を...えぇこの際味に関しては贅沢は申しません。いっそ神様からじゃなくってもいいのです、とにかくトレスく」
「どうなさいましたの?そんな大声を張り上げたりして」
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