短編

□狸の訓練と船漕ぎ神父様
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【 1 】

「トレス...君?」
 おそらくは手足を縮めて丸くなってブランケットに潜り込んでいる人物の、僅かに見える褐色の短髪は、ナイトロード神父にある同僚を容易に連想させた。
「あぁ、訓練だよ」
 
 ナイトロード神父に答えたのはベットの住人ではなく、脇でデスクワークに没頭していたウィリアム=ウォルター=ワーズワース神父だ。
「潜入捜査の際、寝たふりをしないといけない場合があるからね」
「寝たふり・・・ですか?横になって目を閉じているだけでいい事じゃあないですか」
 
 いったい何の訓練やら――そんな事で良いのなら自分が変わりにベットに潜っていたいと言わんばかりの銀髪の長身――ナイトロード神父がベットに近づきかけるのを、やんわりと手振りだけでデスクの主が引き止める。
「彼の場合、文字通り"死体みたい"に寝てしまうからねぇ」
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