星矢DEドリーム

□花の咲く午後7
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一瞬、筋肉王子こと、アイオリアの姿が浮かんだ南だったが。

「そういえばまだ、南さんは彼に会った事はなかったのですね」

「えっ? アイオリアじゃないんだ?」

「あっ。やっぱりアイオリアの事だと思ってたんだ、南♪」

面白そうに笑う貴鬼は、1人、ココアの入ったマグカップを持っている。

「フフッ。そうだな、あいつもたしかに武道バカだが、単純バカとも言う」

てっきりアイオリアの事を言っていると思っていた南だったが、新たな人物の登場に首を傾げるのみだった。

沙織ちゃんの知り合いは、外国人ばっかりか…?

「まあ。それでなくても『六道型』は、その世界では有名ですよ?」

「その世界って…、オタクの世界?」

「ハハハハハッ! 南、君は本当におもしろいな!!」

大口を開けても優雅さを損なわないアフロディーテに大笑いされ、南は複雑な笑みを返す。
何となく、出会いからこのかた、アフロディーテにバカにされているような気がしてならない南だった。

「『六道型』の使い手が沙織様の友人だと知ると、きっと目の色を変えるだろうな、彼は」

「そんなに大層なもんでもないけど?」

世間一般に普及していないものを、大層がられても…とは、南の個人的な意見だ。
このご時世、実践第1の武道が一体何の役に立つというのか?
幼い頃から、それが理由で何度となく太郎とぶつかってきた南。
稽古が嫌で家出をした事も数知れず。ケガをする事だってしょっちゅうだ。
それでも、呼吸をするのと同じように、『六道型』はすでに南の身体に当然のように身に付いていた。

「彼に会った時は、ぜひ、手合わせしてやってくれ」

まだ笑いが引っ込まないアフロディーテに、ほら、とコーヒーのおかわりを注がれる。
南は、彼が笑い上戸なのだと知った。

「だから、手合わせする程、上等なものじゃないってば」

「いいや。頼んだぞ」

人の話を聞かない男め。どんだけオレ様? …と、心の中でだけぼやく南だったが。

「……?」

不意に。隣に座る沙織が、何か言いたそうにモジモジとしている事に気が付いた。

「何? どうしたの、沙織ちゃん」

「あっ。えっと、あのですね…」

何やら俯いたまま、もごもごと言葉を発しようとするのだが、何を言っているのか分からない。
南は身を屈めて沙織の口元に耳を近付けるが…。

「……っ……です……か?」

「?? ゴメン、もう1回言ってもらっていいかな?」

「あの…今度、の日曜…ですが……」

ん? 今度の日曜…?

「確か、休みだったような…」

自分の勤務を頭の中に思い浮かべる南。
そして、気付く。部屋の中にいる人間達が、沙織の次の言葉を待っている事に。

あ〜あ。顔真っ赤にさせちゃって…。

そのあまりにも一途な態度に、南はふう…と小さく息を吐く。

「沙織ちゃん」

「は、はい!」

突然、名前を呼ばれ、沙織は背筋をピンッと伸ばす。

そんなに構えなくてもいいのに…。ただの友達なのになあ〜。

その友達を今までもった事のない少女なのだ、沙織は。
だから、南の方から誘う。
まるで、何てない事のように。


「遊びにいこっか。日曜日」

「!!!」

瞬間。
沙織がソファから浮き上がったように見えたのは、南だけが見た幻だったのか?

「はい!!!!」

今までで1番の笑顔で、沙織は大きく頷いた。





かわいいですなあ、アテナ☆そして…次回、新たな黄金さん登場です☆☆
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