コラボ小説

□迷探偵を起こさないで 6
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『烈命星消失事件』 それは、今から二年程前に世界中で話題になった大事件。


さる英国の大富豪が持つ宝石『烈命星』別名『空海の涙』と呼ばれる真紅のルビーをあしらった首飾りは、世界中の大富豪や名だたる有名人の間を流転していた幻の宝石だった。
元々、極東にある小さな島国の殿様のものだったのだが、第二次世界大戦時に海を越えて大陸に渡ったとされている。
その宝石を持つ者は、未来永劫の幸せを得るとして伝説にまでなっていた。



しかし。



最後の持ち主だった大富豪ムスターファ氏の所に届いた一通の手紙が、その宝石の運命を大きく変えた。




「現代の怪盗・C723号だって」




クールな名前だな…と、呑気に感想を述べる少年のその黒い瞳は、その実、面白くてたまらないと語っていた。



『現代の怪盗・C723号』



それは、ムスターファ氏に予告状を送りつけて来た人物だった。
世界をまたにかける神出鬼没の怪盗で、殺しや暴力的な手口を一切見せない。
警察や盗み出す相手をあざ笑うかのような鮮やかな手口で、難なく目的の物を奪っていくその姿に、熱狂的なファンまでいる始末。
一度も失敗をした事のない、謎多き怪盗。

彼が狙いを定めた『烈命星』を所有するムスターファ氏は、その挑戦を自信満々に受けて立った。
そして、最高のトラップでもってC723号を待ち受けていたのだが、何百人もの警察と私設武装団の包囲網をいとも簡単に突破した彼は、泡を食うムスターファ氏にわざわざ礼まで言って立ち去って行った。


「いい運動をさせてもらって、ありがとう」と。


ムスターファ氏はそれから体調を壊し、社交界から姿を消した。
しかし、それを惜しむ声はなかった。
彼は元々、その強引過ぎる経営手腕でもって、至る所で恨みを買っていた。
C723号を捕らえるべく張ったトラップも、一歩間違えればその命を奪ってしまう程の危険なものであったし、ムスターファ氏に同情する声はなかった。
しかし。
不思議なのはそのトラップをC723号がどうやって突破したかだった。
最高の罠と称されたそれは、今まで誰も破った事がなく、事件が事件なだけに、とうとうある新聞社が、C723号がどうやってその罠を突破したかを広く懸賞金付で世界中に応募する事になった。

それから様々な人間が我こそはと名乗りを上げたが、今現在、まだC723号の手口を見破った人間は一人としていない。






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