蜃気楼小説
□5月3日。晴れ
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「どういったものですか? プレゼントですか?」
「…誕生日の」
ピーンときた。
これは100%彼女へのプレゼントだ。
少々、がっかりしながらもさらに質問を続ける。
「どんな花にしますか?」
「花の事は俺にはさっぱり…」
青年の困り果てた表情があまりにも可愛らしくて、つい助言を口にする。
「お相手のイメージに合わせて、作らせてもらいますけど」
「えっ」
パッと顔を上げた瞬間の目の輝きに、わたしの胸がドキッと高鳴る。
「どういった方なんですか?」
「えっと…あいつは大人で優しくて頼りがいがあって、ちょっじじくさいところもあるけどたまにすんげー子どもっぽいワガママ言う時もあって…。うーん。難しいけど、尊敬できる奴だ。…と思う」
(彼女じゃないのか??)
100%彼女だと思っていたのに、どうやら違ったみたいだ。
こんなに嬉しそうに相手の事を話すもんだから、彼女でもおかしくないのに、じじくさいときたもんだ。
「お歳を召された方でしたら、こちらの暖色系の花にしましょうか?」
「お歳…って程じゃねーけど。けど、そうだな。あいつ、こんな色好きだわ」
「分かりました。それでは、10分程お待ちいただければ、すぐに作らせてもらいますんで」
そう言って、わたしは水の張ったバケツから花を選び出す。
様々な種類の花を組み合わせ、長さを合わせ、花束を作っていく。
その動作をまるで珍しいものでも見るかのように青年がじっと見つめていた。
(なんか、やりにくいなあ…)
子ども達がよく、目を輝かせて覗いてくる事はあるけど、いい歳をしたちょっと見た目のイイ青年がじっと見つめてくるのは、やはりやりにくい。