星矢DEドリーム
□花の咲く午後10
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「これは一体、何の機械ですの?」
それ、を見た瞬間の沙織の顔がおかしくて、南は思わず吹き出していた。
「これで、シールが作れるのよ」
「しーる…ですか」
「そっ。中に入って、わたし達の写真を撮って、それをその場でシールにしてくれるの」
「そんな事ができるんですか!!!」
どこの山奥から出てきたのかとツッコミを入れたくなるくらい、予想通りの反応を返してくれる沙織。
『ゲーセン行こうか』
ドーナツを食べた後、次はどこに行きたいかと問う前に、南の方から行きたい所を口にした。
『げーせん…ですか? 南さんの行きたい所なら、わたくしはどこへでもご一緒しますわ』
沙織のボキャブラリーにカタカナは存在しないのか。
文字にしなくてもわかる平仮名読みに、南は肩を震わす。
ほんと、おっかしー子!
『沙織ちゃんくらいの子がよく遊びに行く場所よ。ゲームの機械がたくさんあって、ビリヤードや卓球なんかもあるわよ』
『ビリヤードですか。それなら、たしなむ程度でしたら…』
たしなむ程度のビリヤードがどんなものなのか分からなかったが、南は最初に入ったビルを出て、駅近くのアミューズメントビルに沙織を連れてきた。
「今日の記念に、プリクラ撮ろっか」
「えっ? あっ、ハイ!」
意味が分からないまま頷く沙織の腕をとり、南は近くにあったプリクラの機械に少女を引っ張り込んだ。
「こっちは…こうで、…こう、こうっと。はい、あのカメラ見てポーズ決めてね」
「えっ? ええっ?? きゃっ!」
一人、パニクる沙織がおかしくて、南はさらに笑う。
「ほら。大丈夫だから。落ち着いて、あっち見て。ハイ、笑って?」
「こう、ですか…?」
パシャッというシャッター音が再び鳴る。今度はちゃんと笑顔を作って見せた沙織を微笑ましく思いながら、二枚目、三枚目と続けて撮影をしていき……。
「できた!」
トサッと出来上がって落ちてきたプリクラシールを沙織の前に差し出す。
「まあっ!!!!!」
目を見張る沙織。
驚きで肩を震わす沙織の前で、さらにシールを機械の横についているハサミで半分に切る。
「はい。はんぶんこ」
「ありがとうございますっ!!」
渡されたシールをしっかりと掴み、「一生の宝物にします」と大袈裟な事を本気で言う沙織に、南はオーバーなんだから…とそっと目を背けた。
その耳が、ほんのりと赤くなっていた事に、沙織は気付いただろうか?