星矢DEドリーム
□花の咲く午後9
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ザワザワ……
日曜の朝。たくさんの人で賑わう駅前に、南は来ていた。
いた…!
慌ただしく行き交う人混みの中、そこだけ時間が止まったかのような空間があった。
空からスポットライトが当たっているかのように、そこには神々しいまでの光が満ちている。
光の中に立つのは、本日の待ち合わせの相手。
行き交う人々が足を止め、そのあまりの美しさに言葉を失っているのが分かる。
ってか、いつからいたのよ?
「沙織ちゃん!」
小走りに約束の相手に寄っていった南は、少女の側まで行くと、小さく声を上げた。
「待ち合わせは10時でしょ? 何分前に来てたの?」
「今さっきですわ」
ニコニコニコニコ。
満面の笑み。超がいくつついているのかさえも分からない程の、上機嫌。
南は、9時30分をさしている腕時計に目をやり、はあっとため息をついた。
「わたくし、いてもたってもいられなくて…」
昨夜はほとんど眠っておりませんの…と、何のてらいもなく言う沙織に、南はハハッと笑う。
遠足前日の小学生か?
でも、仕方ない。目の前の少女は、学校に行った事もなく、こうして約束をして遊びに行く友達も今までいなかったのだから。
「早く来て、ご迷惑でしたか…?」
そっと、自分の反応を探るように上目遣いになる沙織は、はっきり言って、心臓に悪かった。
か、可愛い〜!!!!!!
自分が男なら、間違いなく落ちている。そう、南は感じずにはいられなかった。
「まさか。約束の時間を守るっていうのは、人として当然よ」
「ありがとうございます!!!!」
「やっ、別にお礼を言われる程のもんじゃ…」
一挙一動がオーバー。でも、それは計算でもなく素なのだから、可愛くて仕方ない。
恐ろしきかな、天然爆弾……。
「さあ。これからどこに行こっか?」
気を取り直して、南は軽い口調で沙織に話しかける。
「わたくし、ショッピングがしたいです!」
「オーケイ。じゃ、あっちのビルに行こっか」
「はい!」
小柄な南の後ろを、トテトテとついてくる美少女。その光景は、どこか微笑ましいものでもあった。
「わたくし、今日のように町で待ち合わせするのは初めてでしたが、みなさん本当に親切で驚きましたわ」
「ん? 親切って?」
「初めて駅前に出るわたくしがあまりにも危なげだったのでしょう。みなさん、どちらへ行くのかと声をかけてきて下さって…」
「…??」
「1人なら、一緒に行きましょうとまで誘って下さったのですよ。こんな見ず知らずのわたくしに」
「それって……」
「それとも、そんなにわたくしは困った顔をしていたのでしょうか? 本当に何人もの殿方が声をかけて下さって」
「それ、ナンパやん!」
思わず飛び出す、関西弁のツッコミ。
「難羽……?」
「沙織ちゃん。それ、恐らく、漢字違うよ?」
「?? ……悪い事なのですか?」
アテナをナンパて……。罰当たりです、はい☆