星矢DEドリーム

□花の咲く午後8
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「サイキンのワカモノは一体、どこで何して遊んでるんですかね?」

昼休憩。詰所の裏で何気に言った南のその一言に、職場の仲間達は一斉に動きを止めた。

「えっ! 年下の男ッスカ? さっすが、六道先輩」

「うそ! マジ? 遊ばれてない?」

「やだ〜。賭けに負けたじゃないの〜」

ぎゃーぎゃーと次々に喋り出す仲間達に、南はあんたら…と低い呟きを返す。

「ねえ。先輩の子どもさんは休みの日とか、何して遊んでるの?」

こいつらに聞いても埒が明かない。そう判断した南は、小学6年生の子どもがいる真由に救いを求めた。

「まさか。10代の彼氏…?」

「先輩。今度は唐揚げじゃすまされないですよ…」

じとっと真由を睨む南。

「冗談よ、冗談。んー、そうねえ。普通にカラオケとかボーリング。あっ、よくゲーセンに行ってきたとか言って、ぬいぐるみもって帰ってきてるけど」

ゲーセンか…。

社会人になっても、カラオケやボーリングは意外によく行く。しかし、ゲームセンターとなると話は別だ。

「ゲーセンなんか、もう10年近く行ってないかも…」

学生の頃はそれこそ時間があれば、友達の自転車に2人乗りして、学校近くのゲームセンターに行った南だった。
行くと大概、クラスメイトや同じ部活の仲間達がいて、みんなでわいわいと遊んだものだ。

「それ。いいかも」

懐かしさが込み上げてきた南は、満面の笑顔で真由の肩を叩いた。

「先輩もたまにはいい事、言ってくれるね」

「あんた…。わたし一応、あんたの先輩…」

何となく、ワクワクしてきた南だ。

あんなにも可愛らしい子を連れて歩いてたら、きっとみんな振り返るだろうな。
あ〜。なんか日曜が楽しみになってきたかも♪




そんな感じで週末。
沙織との初デート(?)を翌日に控えた南は、いつものように道場で1人、朝稽古に励んでいた。
薄暗い道場の中は、早朝独特の澄んだ匂いが充満していて、侵しがたい神聖な気持ちにさせてくれる。
もうじき昇り切るであろう陽の光りが、徐々に空気を染め変えていく。

ダンッ! ダンッ!

両手を板敷きの床に着き、くるりと回って起き上がる南。柔道などでよく見られる、受け身の練習だ。
畳の上でなく、板敷きの上での練習も手慣れたもので、身体を打ち付ける事もなかった。
稽古は、無心になってやれるから好きだった。何も考えずにただ身体を動かし汗をかく。
それだけの事でも、南にとっては気持ち良かった。

「……ふう」

目標回数をクリアした南は、道場の隅に置いてあったタオルを手に取り、額にかいた汗を拭った。

「気持ちいい〜」

朝稽古の後のシャワーと朝ごはんは、また格別。

「さって、シャワーシャワー♪」

大きく伸びをし、そのまま入口に向かって歩き出した南だったが……。

「……?」

ぴたりと歩みを止め、目を細める。

「っ!」

ダダダッと窓まで走り寄るやいなや、小さく開いていたガラスを全開にする。

「ヘンタイ!!」

「!」

窓の向こうにいた人影が息を飲んだのが分かり、南はそのまま庭に踊り出た。

「へ、ヘンタイだと…?!」

庭に飛び出した南だったが。
そこに立つ変質者の姿に、呆然としてしまう。

稽古をする自分をじっと見つめる視線には気付いていた。特に何もしてこようとしないから放っておいたのに、シャワーという言葉を発した途端、その気配はゆらりと動いた。
つまりは、風呂を覗くつもりなのだと、南は確信したのだが…。

何、この人?!





さあ、一体誰なんでしょ??
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