星矢DEドリーム
□花の咲く午後7
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はてしなく横文字オンパレードな夕食の後、(味は文句なしに美味しかった)南は応接室で、食後のコーヒーを楽しんでいた。
隣に寄り添うように座るのは、ニコニコ顔全開の沙織。
今日の食卓には、沙織にムウ、貴鬼にアフロディーテがいた。童虎とアイオリアは不在だった。もちろん、ミロも。
「満足していただけましたか?」
「うん。沙織ちゃんは幸せね。こんなに美味しいご飯を毎日、食べれるんだから」
「そう…なんでしょうか?」
そんな事を言われた事もなければ、考えた事もない。そんな表情の沙織に、南は笑顔で答える。
「ご飯が美味しいって、それだけで幸せ3割り増しだと、わたしは思うけど?」
「南さんがそうおっしゃられるのなら、きっとそうなのでしょうね」
ニコニコ。
何の疑いも含みもない純粋な笑顔から、南は顔を背けた。
ま、眩しすぎる…。
「ねえ。それはそうと、どうしてアフロディーテは『六道型』の事、知っていたの?」
話題を変えようと、南は出会ってからどうしても聞きたかった質問を、窓辺に寄り掛かりながら優雅にコーヒーのカップを傾けているアフロディーテに投げかけた。
「ん? ああ、その事か…」
ゆっくりと振り返り、口元に微笑を浮かべるアフロディーテ。
恐ろしく絵になる。まるで、美の巨匠が描いた1枚の絵画のよう。
柔道や空手、合気道などと違い、『六道型』は南の父親・太郎が独自に編み出した武道で、まだまだ世間一般には浸透していない。
スポーツと呼ぶには危険度が高く、実践第1の『六道型』は、武器は一切使わない。自分の身体が最強の武器となる。
大勢の相手との戦いの方法や、不利な状況でいかに自分に有利に戦うかなど、スタートと同時に始まるものとは、明らかに違った。
従って、より多くの人に自分の武道を広めたい。……というよりかは、自分の見込んだ人間にだけ、完璧に『六道型』を伝授したい、という思いが父・太郎には強いようだった。道場も南の実家にあるだけで、弟子の数も極端に少ない。
ただ、たまにどこの国の人…? というような人間が道場にやって来たりする事はあったが。
「身近に武道バカがいるんでな」
フッ、と鼻で笑うその仕草は、相手の事を明らかにバカにしているのがミエミエだった。
「武道バカ。そうですね、武道オタクとも言えますね」
しかも。ムウまでもがさらりとそんな毒を吐く始末。
どんなんよ…?