星矢DEドリーム

□花の咲く午後6
1ページ/3ページ

残業がないのが、交代制のシフトがある職場の良いところだ。

「今日はみんなで飲みに行くんですけど、どうですか?」

「今日はパス。急いでるから、またね」

後輩からの飲みの誘いに軽く断りを入れ、南は着替えてすぐ駐車場に向かった。
職員達は皆、ノリが良く仲も良いので、誘う時も断る時も、気を使わなくていいので気楽だった。

「六道さん、最近付き合い悪いですよ〜」

「また今度ね。急いでるの」

そんなにわたしと遊びたいのか。可愛い奴め…と、南は1人ほくそ笑み、愛車に乗り込む。
今日は城戸邸で夕飯をご馳走になる予定。
仕事を終えた自分が来るのを待ってもらっている状態なので、南は急ぐのだった。

自分の家じゃあんな豪華な食事、食べられないもんね。

城戸邸で出される食事は、超一流シェフによる豪華そのものな料理。
一般庶民の南にとって、ボーナスが出た時でさえ食べられないような物ばかりだった。
何だかんだで、トモダチとして沙織との付き合いを楽しんでいる南。

「あと5分くらいか…」

夕方はどうしても混む道路を走る南だったが。

「……?」

不意に、時速50キロで走る車の窓の向こうに、何かがすうっと通り過ぎて行ったのが見え、南は首を傾げた。

何だ…?

窓の外を見ても、何もない。
気のせいか…と思いながら、南は城戸邸の駐車場まで車を走らせ、駐車した。
途端。

「南!!」

駐車場の入口から駆け寄ってくる少年に、南の顔が綻ぶ。

「貴鬼! よく分かったわね」

駐車場から屋敷までは離れている。車のエンジン音が聞こえるような距離でもないのに、このタイミングの良さはどうしてだろうか?

「外で遊んでたの?」

「いいや。南の小宇宙を…ああ、えっと。そう! 駐車場で遊んでたんだ、アフロディーテと」

「アフロディーテ?」

そう言えば、沙織ちゃんから来たメールの中にも、そんな言葉が混じっていたような…。
メールは平仮名打ちだったけど。

南は、城戸邸にいる、知っている限りの人物を頭の中に思い浮かべてみた。
まずは、この屋敷の主人・城戸沙織。
そして、沙織に仕える執事の辰巳。スキンヘッドの強面だが、いつも貴鬼や他の人間にからかわれっぱなしで、気の毒に思えてしまう程だ。
童虎は年齢不詳だが、腰の曲がった小さな老人。老師とみんなには呼ばれているけど、もしかしたら日本人じゃないのかもしれない。
流暢な日本語を話してはいたけど。色々と話をしてみると、なかなか面白い人で、少年のような瞳とのギャップが新鮮だ。
ミロに関しては、あまりコメントをしたくない。いい印象がないからだ。美男子なのは認めるが。
あとは、いつ行っても筋トレばっかりしている金髪・碧眼のアイオリア。汗が似合う体育会系美男子。
一度、会ったきりのサガ。眉間にシワの寄った顔は、苦労性な性格を表している。委員長タイプ・長男タイプに違いない。
ミロや貴鬼が好き勝手やって、彼の眉間のシワをより深いものにしている…はずだ。
そして、少女のような顔立ちのムウ。
彼に関しては、ミロとは逆に語る事が多すぎる。南にとっては語る事自体が恐れ多く、その姿を思い起こすだけで頬が赤らむ存在。



Keyの中で、ムウではなく、ムウ様なのです☆なぜか、別格扱い…
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ