星矢DEドリーム
□花の咲く午後4
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友達。トモダチ。FRIEND
「え〜と、友達…?」
「ああ」
真剣そのもので頷く童虎に、とりあえずどこからツッコもうかと思案した南だったが、一番言いたい事を先に言う事にした。
「友達っていうのは、誰かに頼まれてなるものじゃないと思うんです。お互いが仲良くなりたいって思って初めてなるものでしょ」
「うむ。確かに」
「こんな可愛らしい子と友達になれるのは、とても光栄な事だと思うけど…」
もっと歳の近い子に言うべきなんじゃないの? と続けようとした南だったが。
「事情があって、沙織お嬢様は学校には通っておらぬ。しかも、周りにいる人間で南のようにまともな意見を持ち、尚かつ口にできる人間がほとんどいないんじゃ。悲しい事にな」
「童虎さんは…?」
「わしは沙織お嬢様に仕える者。友人にはなれぬ」
まあ、そうだろうけど……。
「わしは、南に会って天啓を感じたんじゃ。きっと沙織お嬢様の良き友になってくれるはずとな!」
「そんな、オーバーな…」
思わずな南の呟きに、大袈裟ではないと童虎も返す。
貴鬼はおもしろそうに目を輝かせるばかりで、肝心の美少女は俯いていて表情が読めない。
断るのが当たり前だと思うのに、少女が悲しむんじゃないかと思うと、なぜか気が引ける南だった。
その時。
「南が来てるのか!!」
バアーン、と大きな音を立てて応接室のドアが開かれたかと思うと、紺色の嵐が乱入してきた。
「何で俺にも声をかけてくれなかったんです、老師! 会いたかったぞ、南!」
紺色の髪の美青年は、南の両手をぎゅーと握り、嬉しそうに目を細めた。
本当ならこんなイケメンに手を握られたら赤面するところだったが…。
通りすがりで強盗に襲われ、買ったばかりのブランド物のストールを台無しにし、イケメンだけどチャラ男な外人には迫られ、今度はエレベーターで一緒しただけの老人に、仕えているお嬢様の友人になってくれと頼まれ事をされ…。
厄年…?
脳裏に浮かぶ、不吉な漢字2文字。
「厄払いに行かないと…」
そんな南の呟きのすぐ後。
「その手を離しなさい、ミロ。嫌がっているのが分からないのですか?」
涼やかな草原の風のような声が、南のすぐ後ろから聞こえてきた。
そして、背中からヌッと白い腕が伸び、ミロの手を掴む。
「ムウ!」
「ムウ様!」
えっ? と南は後ろを振り返り……。思わずポカンと口が開いたままになってしまう。
ああ。ムウ様登場です☆☆