星矢DEドリーム
□花の咲く午後3
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城戸邸に着くなり、老師は真っ直ぐに沙織の私室に向かい、そのドアをノックした。
「はい?」
すぐに中から返事が返り、目を見張る程の美少女が姿を見せる。
現代に蘇った戦いの女神・アテナ。全ての聖闘士達が敬い、尊ぶべき唯一の存在。
「まあ、老師。ホテルから突然いなくなったので驚いていましたのよ?」
「アテナ。見つかりましたぞ!」
「えっ?」
ホテルで会談中の沙織の護衛をしていた老師がいきなり小宇宙を絶った。
他に2人いた護衛の星矢とミロは、老師に限ってその身に何かが起こるはずがないと思っていたのだが、任務を途中で放り出すような事を、デスマスクならともかく、あの紫龍の師でもあるライブラの黄金聖闘士がするとは…と、驚きを隠せないでいた。
しかし。沙織は老師の目の輝きを見た瞬間、全てを悟ってしまった。
「本当に…?」
「明日。この屋敷に来るように言っております。心・技・体共に申し分ないおなごじゃ」
「そうですか…」
嬉しそうに微笑む沙織だったが、すぐにフッと顔色を曇らせた。
「でも……。大丈夫でしょうか、老師?」
「何を弱気な…」
「わたしは別に、あなた達がいてくれれば何も不自由な事はありません。この屋敷には辰巳だっていてくれますし」
「いえ。これは聖域全体の総意なのですよ、アテナ」
「皆がそう思ってくれるのは、本当に嬉しいのですが…」
「まずは明日。そのおなごに会ってみて下さい。全てはそれからの事」
「……そうですね。分かりました。明日。明日……」
さて。
ここに来て、南は非常に迷っていた。
「デ、デカいし…」
夜通しかけて散々悩み、結局、もし住所の場所で老人が一人で待ち続けるような事があれば、そっちの方が大変だと考え、電車に乗ってこの地にやって来た。
しかし、しかしである…。
「何なの、このお屋敷…」
恐ろしく仰々しい門構えのその屋敷には、呼び鈴ですら押す事を躊躇させる迫力があり、一般市民の南としては、このまま回れ右をしたくて仕方なかった。
門の向こうには、薔薇のアーチに噴水、イギリスの女王の庭と言っても過言ではない見事なまでの庭園。
そしてさらにその奥に控えるのは、西洋造りの立派なお屋敷。
ここ、ほんとに日本…?
辺り一帯は閑静な住宅街で、周りにある家もなかなか立派なのだが、この屋敷に比べれば犬小屋程度と言ってもおかしくはない。
「あのおじいちゃん、実はどっかの会社の創業者とか…?」
やっぱり帰ろう。そう思って踵を返した南は。
「!」
踵を返した先に立つ、6、7歳くらいの少年に気が付いた。
利発そうな、でもイタズラが好きそうな目の綺麗な少年。大きくなるのが楽しみな顔立ちをしてはいるが、眉がなんか変…??
「お姉ちゃん、何してんの? 中に入らないの?」
「えっ?」
まさかさっきから門の前でウロウロしていたのをずっと見られていたんじゃ…と、内心汗をかいた南だったが。
「1人で百面相してるお姉ちゃん見てるのもおもしろいけど、どうせなら中に入って遊ぼうよ」
南が何か言葉を返すより早く、重々しい門がギギッと独りでに開き、少年はひらりとその身を敷地の中に滑り込ませてしまった。
「ほら、早く行こうよ!」
「あっ、こら! 勝手に入っちゃダメじゃないの!」
「大丈夫さ。おいら、ここのお嬢さんととっても仲良しだもん」
ほら、行こうよ…と強引に腕を取られ、その力の強さに驚くまま南は門の中に入っていった。
変な眉…。変な……(Keyの呟き)