コラボ小説
□迷探偵を起こさないで 12
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「だから、俺達は一緒に銃声を聞いたんですよ?」
尚も言い募ろうとする直江に、色部はきっぱりと断言した。
「別に、ずっとこのままここにいろと言っているわけではないのですよ。少なくとも、あなた達は現場に居合わせた重要参考人だ。我々の目の届く範囲にいてもらう義務がある」
「しかしっ!!」
「もういいよ、直江」
後ろから、高耶は遠慮がちに直江の服の袖を引いた。
目の前の男が、自分のために激しく怒ってくれているのが分かるだけに、申し訳ない気持ちで一杯の高耶だった。
「オヤジ達とも連絡ついたし、ハイスクールもしばらく休みだし。俺は別に」
「しかし、これではあなたが犯人だと言われているようなものだ!!」
怒り狂う直江を、離れたところから観察するのは中川と綾子。
特に、中川の瞳はランランと輝いていた。
まるで興味深い研究対象を見つけたと言わんばかりに。
「見たまえ、綾子くん。あの優柔不断でお人好しの代名詞のような直江君が、声を荒げて怒っておるわ。たった1人の人間のために、こうも変われるものなのか」
「恋は盲目ですわ、博士」
直江の変化を興味深い研究対象として見ている中川に対し、綾子はといえば科学者ではなくむしろ我らが腐女子目線で直江と、そして高耶を見ていた。
「ヘタレ攻めと女王様受け…。いえ、今は女王様キャラはなりを潜めてるから、純情美少年受けかしら…? ふふっ…」
「綾子君…?」
ぶつぶつと、博識なはずの自分が聞いた事もない言葉を羅列していく綾子に、中川は怪訝そうに眉を潜めた。
「あなた達には、しばらくこの研究所から出ないでいただきます」
そう強く言い捨てて、色部は部下と共に部屋から去って行った。
「横暴な。国家権力をカサに、何たる暴挙じゃ」
さすがの中川も、警察の態度に憤慨を隠せない。
「ええ。博士の言う通りですわ。……何かなされますか?」
「いいや。今のところはまだじゃ」
「???」
何やら直江の分からないところで謎めいた言葉を交わす綾子と中川。
首を傾げる直江の袖を、高耶は再び引っ張った。
「高耶さん…?」
「あの……ありがとな、直江。直江が怒ってくれて……、俺、嬉しかった」
恥ずかしそうに俯くその頬がほんのり桜色になっている事に気付き、直江の心臓の鼓動が急速に速くなる。
た、高耶さん! なんて可愛らしいんだ!!!!!
再び沸き起こった衝動のままに、目の前のいじらしい少年を抱き締めようと手を伸ばした直江だったが。
「しかしまあ。考えようによっちゃ、誰かさんにとっては予想外のラッキーだったな」
「博士……?」
「事件がなければ、高耶君はすぐに家に戻れるはずじゃったのに。解決するまで、研究所で過ごさないとならんわけじゃ」
「!!!」
そこまで言われて、直江はハッと目を輝かせた。
事件が解決しないかぎり、高耶さんとずっと一緒にいられる!
苦節何年。
中川研究所で実験動物のような目に遭う事もしばしば。しかし、我慢してよかった。
直江は心の底からそう思った。
この研究所にいたからこそ、運命の人と巡り会えたのだ!!
「博士!!」
「わしからのボーナスじゃ」
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