コラボ小説
□迷探偵を起こさないで 9
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「どうだった?」
「…ダメだ。おじさん、すっごく落ち込んでて…」
親友の自宅から出てきたのは、肩を落としてぐったりとうなだれた譲。
落ち込んでいるのはお前じゃないかと、父親が心配する程、譲はあの事故以来、塞ぎ込み痩せ細っていた。
父親も同様だったが、氏照の憔悴振りは見る者の悲しみを誘う程だった。
事故で川に転落した3人。
奇跡的に成田親子は軽症で岸に流れ着いた。
しかし、高耶の行方だけが依然として知れなかった。
氏照が2人を責める事はなかったが、警察の決死の捜索にもかかわらず、愛息は未だ見つからなかった。
「高耶はきっと生きてる。俺には分かるんだ」
「譲…」
譲は最初からそう断言していた。
根拠なんかなかった。
ただ、魂がそう告げるのだ。
高耶は無事でいる、と。
「どこにいるんだよ、高耶」
あの日とは全く違う、どこまでも晴れ渡った空が、見上げた視界には広がっていた。
そして。同じ日の夜。
「誰だっ?!」
研究所で資料の整理をしていた直江は、昼間に忘れた学会へ提出する予定のレポートを取りに、実験室に入ろうとして……
そこで、微かな物音と共に、薄暗い中で蠢く人影を見た。
「そこで何をしている?!」
ゆっくりと、机の引き出しに入れている銃を取り出そうと後ずさる直江に、人影はふふんと鼻で笑って見せた。
「その引き出しの銃なら、弾は抜いておいたぜ?」
「!」
直江は目を見張る。
暗闇でもそんな直江の表情が見えたかのように、人影はゆっくりと立ち上がり、こっちに向き直った。
「何が目的だ。金目の物なんか、何もないぞ」
「そんな物、いらないね」
「! その声!!」
「あれ? バレちゃった??」
「C723号!!」
直江の声が途端に、怒りに染まる。
「何を取りにきた! 烈命星なら、すでに警察が持って行った後だ! この研究所にお前が欲しい物なんか、何もないぞ!!」
「それが、あるんだなあ…」
「お前。まさか!!」
景虎の事になると、妙に鼻が利く直江だ。
許さないとばかりに暗闇の中の相手に向かって拳を突き上げた。
「あの人を連れて行くつもりか!! そんな事、この俺が許さん!」
「別に。連れて行くつもりなんかなかったけど…。それもいいかもなあ。なんてったって、俺、泥棒だし?」
「きさま〜!!」
フルフルと肩を震わす直江を心底面白そうに見つめ、C723号はトンッと身軽に机の上に腰を下ろした。
「あの子は何なんだ?」
「!!」
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