コラボ小説

□迷探偵を起こさないで 7
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直江には、不幸が似合う。
それは、中川と綾子の中での暗黙の了解だった。


「はあっ…」


世界中の不を背負ったかのような顔の男に、綾子はワザと明るい調子で声をかけた。


「ヤダもう。そんな暗い顔してたら、ブサイクな顔のまま新聞に載せられるわよ?」


「…そんなのどうでもいい」


「見てくれだけは2枚目なんだから。もっとしゃきっとしなさいよ。だらしないわねぇ。景虎をちょっとは見習ったら?」


そう言って、くいっと綾子が顎で示した先にいるのは、直江とは対照的に堂々として自信に満ち溢れた黒髪の少年。
まだまだあどけなさの残るその横顔は、天使のように愛らしく、だが悪魔のように直江を翻弄した。


「ほら。挨拶してきなさいよ」


バシッと直江の背中を叩いて前に押し出す綾子。


少年の側に立つ見知らぬ3人の男が、こちらを振り向く。






「お電話して下さったのは、あなたですかな?」


そう言って、その中で一番の年長と思われる40歳過ぎの髭の男が、直江に向かって手を差し出してくる。


「赤鯨ウィークリー編集長の芥川と言います」


C723号の手口が破られる事を期待しています。と、まったく期待していない口調で告げるその男に、直江は内心、ムッとしていた。
貫禄も威厳もある男だったが、妙に嫌味ったらしくて人を見下すようなその態度は、好きになれなかった。


「直江信綱と言います。この研究所の研究員をしています」


名刺を渡すつもりはなかったので、簡単な名前と肩書きだけの自己紹介をする。


「こっちがうちの新聞社の記者。堂森に、カメラマンの葛城です」


「よろしく、直江さん」


「ほぅ〜。こりゃまあ、男前なお人じゃなあ」


屈託なく笑う堂森と葛城に、直江は苦笑いを返す。
浅黒い肌の中肉中背の堂森に、直江と同じくらいの身長があり、何かスポーツをやっているかのように鍛えた身体をしている葛城。


「じゃあ。早速じゃが、謎解きにかかってもらおうかの?」


そう言って、直江を促しかけた堂森は、肝心の男がなぜか動こうとせずにもじもじとし始めた事に気が付いた。


「なんじゃあ? 直江さん??」


「あのですね。わたしではないんですよ…」


「はっ?」


直江の言葉の意味が分からず、3人は首を傾げる。


(うう。どうしたらいいんだ。景虎様が恥をかく事を思ったら、俺が電話した事にしておけば、万事、上手くいくのか??)





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