コラボ小説

□迷探偵を起こさないで 6
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「あら。直江、何してるの?」


両手に抱え切れないくらいの新聞やら雑誌やらを持ち、早朝の研究所の廊下を歩いている直江に、出勤したばかりの綾子は訝しげに声をかけた。
どうやらこの同僚は、一晩研究所に泊まった様子だった。
しかし、それもいつもの事なので特に言及しない。
直江は勤勉な上、頼まれたら嫌とは言えない性格で…。
どうせまた中川に無理難題でも吹っかけられたのだろうと綾子は思っていたのだが。


「資料集めだ」


「? 何の??」


「分からん。彼が読みたいと言ったから」


そのまま綾子には目もくれずに自分の研究室に向かって歩いて行く直江。
残された綾子は、少し意外そうに目を細める。





彼って事はあの子よねえ? 直江、なんか嬉しそう…?





「入りますよ」





自分の部屋なのに、ちゃんと断りを入れるのが律義者の彼ならでは。
どうぞ、と中から声がかかってから、ドアを開ける。


「これで多分、ほとんどの資料が集まったかと思いますよ」


「ん。ありがとう」


直江がドサッとデスクに置いた資料の向こうに、その3倍はありそうな程の大量の資料に囲まれているのは、まだ年端もいかない幼い少年。
床に投げ出された半ズボンからのぞく足はほっそりとしていて、その身体がまだ未成熟なものである事を証明していた。


「ふ〜ん。なるほどね」


「えっ?」


その無造作に投げ出された生足に不覚にも見とれていた直江は、少年のその呟きに反応するのが一瞬だけ遅れた。


「謎は全て解けたって事」


内心で首を傾げる直江に、読んでいた専門書を閉じた少年は輝かしいまでの黒い瞳を惜しげもなく向けた。
その瞳に吸い込まれそうになった直江だったが、ハッと気付いて顔を上げた。


「まさか。これ、全部に目を通したんですか?」


「ああ。一通り読んだ」


何でもない事のようにさらりと言ってのけた少年に、直江は驚きを隠せなかった。
昨日、天使の微笑みに否と言えないまま、この部屋に様々な資料を持ち込んだ。
研究所に置いてある、直江でさえ滅多に読まない専門書から始まり、世界情勢やら事件が乗った新聞。
挙句の果てにはゴシップ記事の乗った三面雑誌まで。
ありとあらゆる分野の読み物を、たった一晩かけて読み尽くしたというのか、彼は。



「これ見ろ」



どう反応したらいいのか迷っていた直江は、おもむろに少年が差し出してきた一枚の新聞記事に目をやった。








「これは……。『烈命星消失事件』じゃないですか」


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