☆矢小説
□ALONE(ジュリアン×ソレント)
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星が降る。
百億の星が、闇の中で瞬きその輝きを競い合う。
流星は海に墜ち、深い海底の神殿にその身を横たえる。
神々は星の命を飲み込み、神々しさを増すばかり。
「何をお考えですか?」
バルコニーに出て、一人夜空を見上げている主の背中に、ソレントはそっと問いかけた。
その背中には、若干16歳にしてソログループを背負っている総帥の重み。
そして、世界の七つの海を支配する神・ポセイドンとしての重責がある。
人がもつには、あまりにも大き過ぎる二つの枷。
しかし、主はその重責から決して目を反らさない。
「かの地にいらっしゃる…女神の事をお考えですか?」
主のジュリアン・ソロは、城戸グループの総帥・城戸 沙織をかつては妻にと望んでいた。
美しさと聡明さ。そして他のどんな女性にももちえない神々しさをもつ神秘の女神・アテナ。
「あなた様がお望みとあらば、今一度…」
主の望む事はわたくしの望みも同じ。
ソレントは主の言葉をじっと待った。
「……彼女にはもう、心に決めた人がいるよ」
「そのような者。あなた様の魅力に敵う者など、この世界のどこにおりましょうか」
それは、ソレントの本心からの言葉。
神が選びし完璧なる器。
堂々たる体躯に、美しい面。
雄々しさと猛々しさの中にも優雅さを秘めた、強い精神力。
それが我が主。ジュリアン・ソロ。
「誰でも、唯一の者を見つけてしまえば、他にどんな魅力的な者が現れようとも、心動かされる事は決してないのだ」
「しかし…」
「よいのだ、ソレントよ」
「はっ」
それ以上、主は言葉を求めていない。
ソレントは黙るしかなかった。
同時に、心の中に沸き起こる小さな波紋。
ジュリアンがアテナを求めていないと知り、どこか安堵している自分がいる。
少なくとも、今のジュリアンの心を占める存在は、いない。
その事が、なぜこんなにも喜ばしく感じられるのか。
「………?」
ソレントは自分にも分からない心の動きに、小さく首を傾げる。
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