小説(版権)

□清秋
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【清秋】



今、こっちでは『秋真っ只中』と言わんばかりの季節。


学校の帰り道、街を歩いていると道行く人達はそれぞれに秋物のファッションを楽しんでいて。


私もそれらを横目で見ながら「あのブーツ可愛いなぁ」とか「ああいう組み合わせもアリだなぁ」とか思ってしまう 。


でも、それと同時に、生まれ故郷の北海道の方では「もう冬支度をしなきゃならない季節だなぁ」とか「もう冬服をひっぱりだしているのかなぁ」と、つい郷愁に浸ってしまった。


やはりこっちは秋真っ只中なだけあって、季節感も手伝ってか少し心に風が吹いてしまってるようだ。


もしかしてこれが『ホームシック』ってやつ?


…まさか。


そんなことをふと思い巡らせていると隣から声を掛けられる。




「ねぇーかなちゃん、何考えてるの?」


「ぅえ!?…いやちょっとぼぉーっとしてた…」




気付けば私の顔の目の前にゆきちゃんの顔があって、下から覗き込まれるような形。




「ちょっ…!顔近いよっ!ここ街中なんだから///


「もーっ、私と居るのに上の空なんて酷いよぉかなちゃんっ!」



「アハハ…ごめん、ごめんっ」




柔らかいほっぺをぷくーっと膨らまして怒る仕種が可愛いくて、つい頬が緩んでしまったが、とりあえず自分の頬をかきながら謝ってみた。




「むぅ…これは是非まるまるバナナをかなちゃんに買ってもらわないとね?」


「えぇ!?…そんな食べたら太るよ?ってまず買いませんからっ!」


「えぇー!かーなーちゃーんっ!」


「どーしても食べたいなら自分で買いなさい」




隣でくちを△にして騒いでるゆきちゃんを見ているとさっきまでのどこか寂しい気持ちが薄れていって、自然と暖かい気持ちになっていく。
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