小説(版権)
□夏祭り(キリリク小説)
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「ヒナさんっ!わ、私と一緒に夏祭りに行かない…かな…?///」
この言葉を伝える為に悩んだ期間は約1週間。
勇気を出して口に出せば、それは数秒。
そして返ってきた言葉は一瞬…
「いいわよ?」
こうして私、西沢歩とヒナさんは一緒に夏祭りに行くことが決定したのだった。
【夏祭り】
勇気を出して誘った日から、あっという間に時は過ぎて夏祭り当日になって。
お母さんに頼んで新しく買ってもらった浴衣を着て、髪もいつもと変えて後ろでまとめあげて大人っぽく。
…これで準備はバッチリ…なはず。
あとはヒナさんに会って、一緒にお祭りを楽しむだけ。
私はヒナさんと知り合って、学校が違うから頻繁には会えなかったけど、何度か会ううちにどんどん惹かれていった。
最初はきっと尊敬から。同じ学年なのに、大きな学校の生徒会長を任されて、スポーツもできて。頭も良くて。
自分にないものを全部持っているあの人を無意識的に追いかけている自分がいた。
気が付けば、ただの『好き』ではなく、ヒナさんのことを考えるだけでドキドキしたり、ただ普通に話すだけで緊張したり、誰かと仲良くしているとこを見て嫉妬したり・・・恋愛感情での『好き』になってしまっていた。
「うぅ…緊張するよぅ…髪型とか色々変えてみたけど変じゃないかなぁ…」
結局、時間ギリギリまで身だしなみを整えていたら待ち合わせの時間を過ぎそうになってしまい、走って待ち合わせ場所に向かう。
「・・・ヒナさぁ〜んっ!ご、めんなさい…ハァ…遅れちゃって・・・」
「ちょっと、歩!浴衣で走ってきたの!?」
「はい・・・だって時間に遅れそうで・・・私から誘ったのに遅れるなんて・・・」
「・・・もう。下駄履いているんだし転んだらどうするの?」
「うぅ・・・でも・・・」
ヒナさんのところに到着したとき、待ち合わせの時刻を5分程度過ぎていた。
しっかりしているヒナさんだから、きっと待ち合わせの15分前にはすでに着いてたんだろうなぁ・・・
(待たせちゃったし、会ってそうそう怒られちゃったし・・・嫌われちゃったらどうしよ・・・)
「でもじゃないわよ・・・せっかくの浴衣、乱れちゃうわよ?それに転んで怪我なんてしたら今日のお祭り楽しめなくなるじゃない・・・」
「ふぇ?///」
(ヒナさん、私とお祭り行くの楽しみにしてくれてたのかな・・・?)
自意識過剰になってしまいそうなセリフを言われ、一瞬思考が止まる。
私が軽くパニックになり、あたふたしていると目をそらしていたヒナさんがまっすぐ私を見つめて口を開いた。
「・・・その髪型と浴衣、歩に似合っていて凄く可愛いわよ?」
そういうとニコっと笑顔をくれた。
「〜っ///ヒ、ヒナさんっ!?///」
「ふふっ、じゃとりあえず行きましょうか♪」
「・・・はい///」
こうして夏祭りデートは幕を開けた。