Book
□罪人(仮)
2ページ/5ページ
レイラ 5歳
小さな村では今日も子供達が声を上げて笑っていた
「向こうの木まで競走だぁ」
一人がそう声を上げると一斉に走り出した
彼等が走り去った後 一つの小さな影が顔を出した
漆黒の髪に緋い瞳を持つ少女の顔はその年齢に似つかわしくない憂いを帯びていた
「あっレイラだ!!」
レイラと呼ばれたその少女は怯えたように体をすくませる
「何してんだよ?」
「此処はおまえみたいな罪人が来るところじゃねぇぞ」
カツ……
レイラの足元に彼女の小さな手に収まるような小石が転がった
反射的に眼をきつく閉じた彼女の腕に2つ目の小石が当たる
「はやく消えろよ」
レイラは動かない
小さなその体に沢山の小石を受けてもただ立っている
レイラに石を投げ付ける子供達の顔は相変わらず笑顔
でも今は汚れた笑みだ
レイラは痛みに顔を歪めながらも涙は決して零さない
「おい、お前ら何やってんだよ!?」
不意に子供の声ではない低い声がした
「逃げろぉ〜」
「レイラの兄貴が来たぞぉ」
声の主は散り散りに走っていった子供達には目もくれず、ただ一人そこに佇む少女に走りよる