*FF[*

□世界を捨て何を得る?V
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皮肉気に唇の端を捲り上げるサイファー。
そうなんだ、ここには時間の流れがないから。

「えぇ〜!?どうして〜?!」

身を乗り出して瞳を見開くセルフィ。あんた歳取ったのにちっとも変わってないな。

「この城は時空から切り離されている。だから、ここに時間の概念はない。時間の流れがないんだ。不思議に思わないか?あんた達は一瞬迷うほど歳を取った。けれど俺達は変わらず昔のままだ」

「言われれば…」

「それだけじゃない。こういう特殊な空間に長くいた俺達の身体は、この空間と同じように時間の概念を失くした」

この城と同じ様に、俺達の身体は時間の流れを失くした。つまり歳を取らない、不老になったという事だ。
不老といっても眠る事は必要だし、栄養摂取も必要だ。ただ一日の繰り返し、それが永遠と身体の中で繰り返す。

「ど、どういう事だ?」

分からないといった顔をするゼル。…あんたも良い大人だろう?もう少し落ち着きを持ったらどうだ。

「つまりだな、俺たちぁ歳を取らねぇんだよ。それこそ永遠の十代ってな」

「身体はそうでも心は大人になって貰わないと困る」

茶化す様なサイファーを軽く睨んで諫める。
それにサイファーは小さく笑って俺の頭を撫でた。
俺にとっては何度もされた行為、向けられた表情なのだが、他の奴等にとってはそうではない。驚愕に瞳を見開き俺達を凝視する。
心は大人に、そう言った俺の想いをあんたは分かっている。だから、そんなに優しい笑みを向けるんだ。
大人になって欲しいのは二度と迷って欲しくないから。子供のままの葛藤に、再び付け込まれて欲しくはないから。かつての様に、自分を置いて行ってしまって欲しくないから。
それが大人になるという事かどうかは分からないが。



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