*FF[*

□世界を捨て何を得る?U
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最初に気付いたのは俺。頭の端がチリッとする感覚に、隣にいるサイファーの腕に縋るように抱きついてしまう。
俺とサイファーしかいないのだから、初めの頃に感じた羞恥や男のプライドは触れ合えるという事実の前に消えていった。とはいえ、触れられれば恥ずかしいし、セックスだって未だに慣れない。ただ無駄な意地を張らなくなった。サイファーには素直になったと言われたが。
概ね幸せな生活にひびを入れる来客に、俺の身体は本能的な恐怖に襲われたのだ。

「スコール?」

数瞬遅れてあんたが気付く。あんたは俺を安心させるように抱き締めると、油断無く辺りを伺った。
ガルバディアがここに来れるとは思わない。けれど、何が起こるか分からないのだ。俺からあんたを奪うような事になって欲しくはない。
そんな気持ちからか、俺はサイファーのコートをギュッと握り締めていた。

「スコール!!」

歪みから最初に現れたのは多分リノア。何故多分なのかというと、幼さの抜けた顔。そんなに時間が過ぎていたんだな。と、俺は場違いな事を考えていた。

「スコール、無事だったのね!」

「な〜んか雰囲気変わってな〜い?この城」

「本当にサイファーと一緒にいたのかよ!?」

「サイファーはんちょも無事だったんだ〜!良かった〜!!」

次々現れる昔の仲間に、俺は何も感じなかった。懐かしいとか会えて嬉しいと感じるより、何とも言いようのない喪失感が俺の中を満たしたのだ。
はっきり言ってしまえば、見つかりたくなかった。あのまま皆諦めてくれれば良かったのにと正直思う。

「スコール?どうしたの?」

心配そうな顔をするリノア。
後からサイファーに聞いた話には、その時俺は迷子になった子供のような途方に暮れた表情で、サイファーのコートの袖を強く握っていたらしい。

「別に、何でもない。皆、良く来てくれた」

俺はそんな気持ちを誤魔化す様に席を立つと、人数分のお茶をいれにいった。




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